オルツ「AI GIJIROKU」問題:売上過大計上の実態と上場廃止の背景
2025年8月31日、AIスタートアップ企業オルツ(東証グロース上場)が上場廃止となることが決定しました。議事録ソフト「AI GIJIROKU」で知られる同社が、売上高119億900万円の最大9割を過大計上していたことが発覚したためです。この記事では、問題の概要と背景、投資家への影響や今後の展望を整理します。
オルツと「AI GIJIROKU」とは
オルツは2014年に設立された日本のAIスタートアップで、AIを活用した議事録作成ツール「AI GIJIROKU」を主力製品としていました。このツールは、音声認識や自然言語処理を用いて会議の議事録を自動生成するサービスで、企業や教育機関で利用され、AIブームの中で注目を集めました。2024年10月に東証グロース市場に上場しましたが、わずか半年で問題が発覚し、市場の信頼を揺さぶる事態となりました。

オルツ株価チャート 出典:日本経済新聞
問題の発覚
2025年4月、オルツは売上過大計上の可能性を公表。第三者委員会の調査により、2021年6月から2024年12月にかけて、以下の金額が不適切に計上されていたことが判明しました:
- 売上高:119億900万円(最大9割が過大計上)
- 広告宣伝費:115億5700万円
- 研究開発費:13億1300万円
証券取引等監視委員会は金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで強制調査を実施し、8月31日の上場廃止が決定しました。
循環取引の仕組みと動機
調査によると、オルツは「循環取引」により売上を水増ししていました。販売パートナーから受注した売上の大半を広告宣伝費や研究開発費の名目で支出。その資金が広告会社を経由して販売パートナーに戻り、最終的にオルツに売上として計上される仕組みです。この手法により、売上の最大9割が実態を伴わないものでした。
第三者委員会は、上場を視野に入れた売上拡大のプレッシャーが背景にあったと指摘。AIスタートアップは技術開発や競争で多額の資金を必要とし、投資家の期待に応えるため売上を水増しする動機が生じやすい環境にあります。
責任の所在
第三者委員会の報告書によると、循環取引は2020年4月頃、元代表取締役の米倉千貴氏の指示で始まりました。報告書は「経営トップの誠実性の欠如」と「内部統制・ガバナンスの不備」を問題の主因と指摘。監査法人や取締役会も不正を見抜けず、監査体制の不備が問題を増幅させました。一部報道では、監査法人(シドー)や主幹事の大和証券への疑惑も浮上していますが、詳細は調査中です。
投資家への影響
オルツの株価は問題発覚後、急落し、上場廃止によりほぼ無価値となりました。個人投資家や機関投資家は大きな損失を被り、グロース市場への投資に慎重な見方が広がっています。実質的な事業規模が当初の発表より大幅に小さかったことが判明し、投資家からは監査法人や証券会社への責任追及の声も上がっています。上場廃止後、オルツの事業継続は不透明で、投資家の救済策も現時点では不明です。
類似事例との比較
オルツの事例は、2000年代のライブドア事件や2015年の東芝不正会計事件と共通点があります。これらのケースも、売上や利益の水増し、ガバナンスの欠如が問題でした。AIスタートアップ特有の成長圧力や技術の不確実性が、不正を助長するリスク要因と言えるでしょう。
今後の展望とAI業界への影響
オルツの不正は、日本のAI業界全体の信頼性に影を落とす可能性があります。AIスタートアップは資金調達環境の悪化を避けるため、ガバナンスや透明性の強化が急務です。金融庁や東京証券取引所は、上場審査や監査プロセスの厳格化を検討するとみられ、投資家には財務諸表の詳細な確認が求められます。オルツは再発防止策としてガバナンス改革を進めるとしていますが、信頼回復には時間がかかるでしょう。
この事件は、AI業界の成長と健全な企業運営の両立が求められる転換点を示しています。投資家や市場の信頼を維持するため、透明な情報開示と強固なガバナンスが今後ますます重要となるでしょう。
注: 本記事は公開情報に基づいて作成されており、法的責任の最終判断は司法当局に委ねられます。



コメント