前回の記事(2026年5月8日)を書いた後、何人かからDMが来た。「トンピンさんにリプライもらってましたね」と。正直、最初は気づいていなかった。
確認したら、山田亨氏本人のアカウントからリプライが来ていた。記事がそこまで届いたことへの驚きと、それ以上に、この10日間で起きた出来事の重さが頭を占領している。
5月15日、海帆(3133)が決算を発表した。9期連続の赤字。最終損失は51.3億円。自己資本比率は4.9%。そして「継続企業の前提に関する重要な疑義」——いわゆるGC注記は、今期も解除されなかった。
同じ夜、株主優待の廃止が発表され、PTSで株価が149円台まで落ちた。
- 前回記事へのトンピン(山田亨氏)本人からのリプライ
- 2026年3月期決算:最終損失51.3億円・9期連続赤字・減損33.5億円
- 自己資本比率4.9%・継続企業の前提に重要な疑義(GC注記、今期も継続)
- EVO FUNDが保有比率47.97%まで拡大(5月13日変更報告書)
- 株主優待廃止でPTS31%超急落(149.5円到達)
前回記事の後、この10日間で起きたこと
前回記事(2026年5月8日)の後、山田亨氏本人のアカウントからリプライがあった。内容は公開情報だ。前回記事は、山田亨氏がMSワラント中止を求める株主提案書を提出したことと、海帆IRが長らく「大株主と認識していない」と回答していた矛盾の露呈を主軸にしていた。その記事が、当事者の目に届いたということだけは事実として記録しておく。
- EVO FUND向け第9回新株予約権(MSワラント)の即時中止
- 代替調達手段の確立
- 「MSワラント中止で需給好転→株価400円台回復」というシナリオの提示
出典:2026年5月8日付 海帆適時開示「主要株主からのご提案の受領に関するお知らせ」・株主提案書原文(要出典確認)
当時の記事で「MSワラント中止だけで400円台に戻るとは思えない」と書いた。それは今も変わらない。ただ、10日後にこれほどの決算が出るとは、正直なところ想定以上だった。
決算の中身——数字だけ見ると、かなりきつい
| 項目 | 2026年3月期 | 前期(2025年3月期) |
|---|---|---|
| 最終損益 | ▲51.3億円 | ▲7.3億円 |
| 減損損失 | 33.5億円計上 | — |
| 自己資本比率 | 4.9% | (低下) |
| 赤字継続期間 | 9期連続 | 8期連続 |
| 継続企業の前提 | 重要な疑義あり(継続) | 重要な疑義あり |
| 来期業績予想 | 未開示 | — |
※数値はYahoo!ファイナンス・株探掲載情報より。確定値は決算短信原文を参照のこと(要出典確認)
減損33.5億円というのは、要するに「この資産はもう計上していた価値では回収できない」という会計上の認定だ。どの資産に関する減損かは、今後の開示確認が必要——現時点では会社側からの明示はない。9期連続赤字という事実に加えて、自己資本比率4.9%という数字は、少し不気味だ。財務的な余裕がほぼない状態で、まだMSワラントが大量に残っているということになる。
監査法人が「継続企業の前提に重要な疑義がある」と判断した場合、決算書にその旨が注記される。倒産を意味するわけではないが、財務の脆弱性が公式に認定された状態。海帆の場合、2024年3月期時点からすでにGC注記が付いており、今期(2026年3月期)も解除されなかった。投資家の間では解除の可能性が注目されてきたが、最終損失51.3億円・自己資本比率4.9%という結果を受け、解除はさらに遠のいた。
EVO FUNDが47.97%——ただし「議決権ベース」では話が変わる
5月13日、EVO FUNDが財務局に変更報告書を提出した。株券等保有割合は47.97%。発行済株式総数59,265,783株に対し、「保有株券等の数(総数)」は54,650,000株とされている。
ただし、この47.97%という数字をそのまま「議決権の47.97%」と読むのは正確ではない。変更報告書の取引明細を一件ずつ確認すると、EVO FUNDの行動パターンはほぼ一定だ。
- 3月9日:新株予約権証券(第9回)57,000,000個を取得(潜在株ベース)
- 3月10日以降:新株予約権を行使→普通株取得→同日または翌日に市場で売却、を繰り返す
- 例:3月10日 新株予約権530,000個行使→普通株530,000株取得→市場で130,700株処分
- 5月1日:新株予約権110,000個行使→普通株110,000株取得→市場で110,000株処分
出典:kabutore.biz掲載 EVO FUND変更報告書(2026年5月13日)
つまり、EVO FUNDは新株予約権を行使して普通株を取得した直後に市場で売却している——これが変更報告書の明細から読み取れるパターンだ。とすれば、EVO FUNDが現時点で実際に保有している「普通株(議決権付き)」は、47.97%の大部分ではなく、未行使の新株予約権証券が中心である可能性が高い。
大量保有報告書の「株券等保有割合」は、実株(普通株)だけでなく新株予約権証券も含めて計算される。しかし新株予約権それ自体には議決権はない。議決権が発生するのは、新株予約権を行使して普通株に転換した時点から。したがって、EVO FUNDが47.97%の「保有割合」を持っていても、実際の議決権比率はそれより大幅に低い可能性がある。正確な議決権ベースの保有比率は、直近の株主名簿基準日時点の実株数で確認する必要がある(要出典確認)。
株主総会でMSワラント中止議案を株主提案しても、EVO FUNDが何%の議決権を持っているか——そこが本当の論点だ。「47.97%だから否決できる」という単純な話ではなく、「実際に議決権付きの普通株を何株持っているか」を確認しないと判断できない。ここは今後開示される株主名簿や有価証券報告書の大株主欄で確認が必要な事項だ。
株主優待廃止——「最後の個人株主向けコンテンツ」の消滅
5月15日の決算発表と同時に、株主優待の廃止が発表された。PTSで株価が149円台まで下落した。
優待廃止自体は、自己資本比率4.9%・9期連続赤字の会社が優待を続けることへの違和感からすれば、むしろ合理的な判断かもしれない。ただ、長期保有を続けている個人投資家にとって、心理的な拠り所がまた一つ消えたことは事実だ。株価が200円台、PTSで149円という状況で、個人投資家の心理的ダメージは小さくないだろう。
🔍 なお@HAVE MARCYの視点——「誠意をもって対話する」の後に来たもの
前回記事の末尾に「海帆は『誠意をもって対話する』と言った」と書いた。その後10日間に起きたことを並べると、誠意の中身が何だったのかという疑問が残る。
EVO FUNDの行使は止まらず、決算は9期連続赤字、GC注記は解除されることなく継続し、優待は廃止になった。株主提案書は受け取ったが、株主総会での可決は——EVO FUNDが48%近くを持っている状況では——構造上難しいかもしれない。
ここで一つ、個人投資家として30年で培った勘を書く。「対話する」と言った企業が、対話の内容より先に不利な開示を続けるとき、それは誠意というより時間稼ぎに見えることがある。そうでないことを願うが——数字がそれを示唆していることも、正直に書いておく。
MSワラントを中止するかどうか以前に、代替の資金調達手段が本当に存在するのか。自己資本比率4.9%の会社に、それだけの信用力があるのか。株主提案書の「400円台回復」シナリオは、この決算を経てさらに不確実性が増した。
この銘柄は「信じる」でも「疑う」でもなく、事実の積み上げで判断するしかない局面に入っている。
今後の注目点——株主総会とEVO行使の行方
- 株主総会の開催日・議案内容(山田亨氏の株主提案が正式議案になるか)
- EVO FUNDの行使継続状況(変更報告書の追加提出)
- 海帆のMSワラント行使停止指示の有無(海帆→EVO FUNDへの指示権があるか・要確認)
- 2027年3月期業績予想(現時点で未開示)
- 継続企業の前提に関する改善策の具体的開示
トンピン氏が前回記事にリプライしたことと、この10日間の出来事は、おそらく切り離して考えた方がいい。リプライは一つのシグナルだったかもしれないし、そうでないかもしれない。ただ、市場はそれより重い事実——9期連続赤字・自己資本4.9%・EVO 48%——を突きつけてきた。
次の変曲点は株主総会だ。それまでの間、EVO FUNDの行使が続くのか止まるのか。そこを見ている。
📌 市場構造・機関投資家シリーズ
・海帆(3133)2026年5月8日適時開示「主要株主からのご提案の受領に関するお知らせ」
・EVO FUND変更報告書(2026年5月13日)— エキサイトニュース
・海帆(3133)株価情報・決算概要 — Yahoo!ファイナンス
・前回記事:EVO FUNDだけが損をしない構造で、海帆は「誠意をもって対話する」と言った
※本記事は公開情報をもとにした個人の分析・考察であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。
