その9割は、あなたを利用するために設計されている。
これは陰謀論じゃない。
投資歴30年、機関投資家の論理を身をもって学んできた人間が、構造として説明する話だ。
「爆益報告」は結果の切り取りにすぎない
Xのタイムラインを眺めると、毎週のように「+30万円確定🎉」「今月も含み益更新」という投稿が流れてくる。
少し立ち止まって考えてほしい。なぜ彼らは損失を報告しないのか。
行動経済学に「ポジティブ選択バイアス」という概念がある。人は利益を公開し、損失を沈黙する。フォロワー1万人のアカウントが100回取引して30勝70敗でも、SNSには30回の勝ちだけが残る。タイムラインは「成功日記」であって「損益計算書」ではない。フォロワーは自然と「この人は勝ち続けている」と錯覚させられる。
これは意図的な嘘というより、プラットフォームの構造が生み出す必然的な歪みだ。「いいね」は利益報告に集まり、損失報告は埋もれる。アルゴリズムが「勝者」を量産する。
推奨銘柄の「真の目的」を知っているか
フォロワー数万人のインフルエンサーが「この銘柄、今が仕込み時だと思う」とポストする。翌朝、その銘柄の出来高が跳ね上がる。
これはポンプ・アンド・ダンプの現代版だ。
- インフルエンサーは「推奨」の前にポジションを持っている
- フォロワーが買いを入れて株価が上昇する
- インフルエンサーは上昇したところで静かに売る
- フォロワーは高値掴みのまま放置される
- 次の推奨サイクルが始まり、また同じことが繰り返される
「でも彼らは証拠を出してる」と思う人もいるだろう。スクリーンショットの証券口座画面がよく貼られている。だが口座残高の画像は証明にならない。複数口座の使い分け、一部切り取り、数字の加工——どれも技術的には可能だ。
明確な損失補塡の約束や虚偽の事実を述べれば金融商品取引法違反になる。しかし「個人的な意見です」「投資判断はご自身で」という免責文句を添えるだけで、法的にはグレーゾーンに留まる。法律が追いついていない領域で、彼らは巧みに動いている。
「億り人」という称号の製造方法
「億り人になりました」という報告は、株クラで最強のコンテンツだ。一気にフォロワーが増え、有料サロンへの導線が生まれ、書籍出版の話が来る。
だが、その「億」の内訳を深掘りした報道を見たことがあるか。
まだ売っていない含み益
大幅に少ないケースが多い
実質資産を開示する人は稀
含み益が1億あっても、確定して税を払えば8,000万円を切る。さらに市況が変われば含み益は蒸発する。「億り人」というラベルは、資産形成の結果ではなくブランディングのツールとして機能している。
株クラインフルエンサーの実際の収益源は投資リターンではなく、①アフィリエイト(証券口座開設報酬:1件5,000〜15,000円)②有料コミュニティ・サロン③書籍・セミナー④企業案件のスポンサード——の組み合わせだ。フォロワーはコンテンツの消費者ではなく、マネタイズの燃料として設計されている。
「再現性」という概念を彼らは持っていない
30年の投資経験で確信していることがある。個人の成功体験に再現性はほぼない。
2013〜2021年の日本株・米国株は、ほぼ誰でも勝てるほど一方向の相場だった。その時代に「自分のメソッド」で勝った人間が、それを体系化してコンテンツ化している。
上げ相場で成功した戦略を下げ相場・横ばい相場に適用しても機能しない。しかし発信者は「自分のスキルで勝った」と信じ込み、それをフォロワーに売り続ける。風の力で走った船を、エンジンで動いたと語っているようなものだ。
機関投資家のファンドマネージャーには「3年以上の実績」「リスク調整後リターン(シャープレシオ)」「ベンチマーク比較」が求められる。個人インフルエンサーにはそれを問う仕組みが存在しない。
では、どう情報を取捨選択するか
ここまで読んで「じゃあSNSの投資情報は全部ゴミか」と思ったなら、それは正しい問いだ。
答えは「8割はゴミ、2割に本物がある」だ。見分け方は単純だ。
- 損失も定期的に開示している(利益だけを報告する人間を信じるな)
- 「なぜ買うか」の論理を説明している(「今が仕込み時」だけは論理ではない)
- マネタイズ構造が透明(アフィリエイト・案件を明示しているか)
- 特定銘柄の推奨より、思考の枠組みを教えている
- フォロワー数よりも、発信の継続年数と一貫性を見る


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