2026.05.01 更新本稿は前稿(2026年4月27日公開)の続報として、2026年5月1日開示のIR(第9回新株予約権 4月行使状況)をもとに加筆したものだ。
今日(5月1日)の朝、海帆(3133)から静かにIRが1本出た。
タイトルは「第三者割当により発行された第9回新株予約権(行使価額修正条項付)の月間行使状況に関するお知らせ」。
読んだ瞬間、「あ、まだ続いてる」と思った。いや、正確には——まだ96%以上残っている。
4月の行使状況:数字で読む「静かな出血」
IR本文の数値をそのまま整理する。
発行総数570,000個のうち、4月末時点で行使されたのはわずか3月末行使分+4月7,650個=合計22,050個(3.9%)だ。
逆に言えば、547,950個(96.1%)がまだ行使されていない。
今後さらに最大5億株弱を超える潜在株が残っている計算になる。〔潜在株数の計算は行使価格による変動あり〕
行使価格の推移:「下げながら行使する」という構造
今回のIRが特に示唆に富むのは、行使価格の推移だ。日付と行使価格を抜き出すと、1ヶ月でじわじわと下がっていることがわかる。
| 行使日 | 新株交付数 | 行使価額(円) |
|---|---|---|
| 4月6日(月) | 35,000株 | 338円 |
| 4月8日(水) | 80,000株 | 325円 |
| 4月10日(金) | 50,000株 | 310円 |
| 4月13日(月) | 70,000株 | 307円 |
| 4月14日(火) | 80,000株 | 303円 |
| 4月15日(水) | 40,000株 | 303円 |
| 4月16日(木) | 170,000株 | 302円 |
| 4月20日(月) | 120,000株 | 299円 |
| 4月22日(水) | 50,000株 | 300円 |
| 4月24日(金) | 70,000株 | 303円 |
月初は338円で行使していたのが、月末には299〜303円になっている。
株価が下がれば行使価格も下がる。これがMS型(株価連動型)ワラントの仕組みだ。
EVOファンドにとって株価が下がることは「損失」ではなく「仕入れコスト低下」にすぎない。
個人投資家が「株価が下がって損した」と感じている間、向こうはより安く株を仕入れて市場で売り続けている。
「月間765,000株の新株」を株式数で考える
上場規程に基づく行使制限の確認欄に、重要な数字がある。
行使制限の計算基準:払込日時点の上場株式数=56,915,783株
4月の交付株式数:765,000株
行使比率(4月単月):1.3%(四捨五入)
1ヶ月で発行済株式の約1.3%が新たに市場に出た。これを12ヶ月継続すれば年間で約15%超の希薄化ペースになる計算だ〔要出典確認:行使ペースが変動する前提〕。そして前述のとおり、未行使残は96%以上残っている。
「止まらない」理由——構造で考えれば当然だ
冒頭に「もうどうにも止まらない」と書いた。感情的な表現ではなく、これは構造上の帰結だ。
① 株価連動型なので株価がどこまで下がっても行使価格が追随する
② 行使した株を市場で売れば差額が利益になる
③ 残543,950個以上の未行使分が待機中——利益機会はまだ96%残っている
④ 行使を止めるインセンティブがない
企業側(海帆)が「やめてほしい」と思っても、それは契約上のオプション権であり、行使するかどうかはEVOが決める。
では海帆はなぜこのファイナンスを選んだのか
答えは資金調達の「最後の手段性」だ。銀行融資や通常の増資が困難な財務状況・信用力にある企業ほど、EVOのような条件付きワラントに頼らざるを得ない。調達側が弱い立場にある時、調達条件は必然的に調達される側に不利になる。これは搾取ではなく、市場論理の帰結だ——ただし、その構造の外側にいる個人投資家にとっては、関係なく株価圧力として降りかかってくる。
なお@HAVE MARCYの視点

「現物で114,000株買い越されている——それでも株価は下がる」
5月1日の売買動向を見た保有者の中に、「現物が114,000株の買い越しだ、需要がある」と喜んでいる人がいる。気持ちはわかる。でもその日の株価は−6.32%、237円だ。買い越されているのに下がっている。なぜか。
同じ日の信用買残を見ろ。1,586,900株ある。現物買い越し114,000株の約14倍だ。信用で買い建てていた人たちが追証・強制決済で投げている。その売り圧力の前では、現物の買い越しなど焼け石に水だ。
さらにEVOのワラント行使による市場への株式放出が毎月続いている。売り圧力の構造を整理するとこうなる。
EVO行使→毎月数十万株を市場に放出(構造的売り)
信用買残→追証・強制決済による投げ売り(連鎖的売り)
現物買い越し→114,000株(焼け石に水)
30年投資をやってきて学んだのは、「一つの数字で喜ぶな、売り圧力の総量を見ろ」ということだ。現物の買い越しは確かに事実だ。しかしIRを読めばEVOの未行使残が96%残っている事実も同時にある。チャートより先にIR本文を読め。売買動向の一行より先に、信用残の総量を見ろ。数字は嘘をつかない——ただし、都合のいい数字だけを見ている人間を、市場は容赦なく騙す。
前稿からの変化点まとめ
変化① 4月に765,000株が新たに市場に供給された(売り圧力の継続確認)
変化② 行使価格が338円→299円まで低下(株価連動型の構造どおり)
変化③ 未行使残547,950個=発行総数の96.1%がまだ行使待ち
変化なし 構造的に売り圧力が長期継続するという前稿の結論は変わらない
前稿では「MSワラント・EVO・仕手株疑惑の構造を解剖する」として一般論と個別論を整理した。今回のIRはその構造が現在進行形で機能していることを、数字で確認するデータとなった。
次の行使状況報告は6月初旬に出るはずだ。そのときの行使価格水準と交付株数が、5月の株価トレンドを映す鏡になる。
