ルンバのiRobotが破産申請——パイオニアの転落と中国企業への道
2025年12月14日(現地時間)、ロボット掃除機「Roomba(ルンバ)」で知られる米iRobot社が、米国デラウェア州連邦破産裁判所に連邦破産法第11条(Chapter 11)の適用を申請しました。これは、事業を継続しながら債務を再編する「再建型」の手続きです。
多くの人が驚いたこのニュース。iRobotは1990年創業、2002年にルンバを発売して家庭用ロボット掃除機市場を切り開いたパイオニア企業です。累計で5000万台以上を販売し、一時代を築きました。しかし、なぜここまで追い込まれたのでしょうか?
最大の転機:Amazon買収の失敗
2022年、AmazonがiRobotを約17億ドル(当時約2500億円)で買収する計画を発表しました。この買収が実現していれば、資金注入を受け、製品開発や競争力強化が図れたはずです。
ところが、2024年1月、欧州連合(EU)の独占禁止当局が承認せず、両社で合意解除に。Amazonは違約金として9400万ドルを支払いましたが、iRobotの財務は急速に悪化。以降、代替の買い手探しも実らず、資金繰りが限界を迎えました。
中国メーカーの猛追が致命傷に
iRobotの苦境の大きな要因は、中国系競合の台頭です。
- Ecovacs(エコバックス)
- Roborock(ロボロック)
- SharkNinja
これらの企業が、低価格で高性能(高度なナビゲーション、AI機能、モップ機能など)の製品を次々と投入。ルンバはシェアを失い、2025年の世界出荷ランキングでトップ5から脱落するほどになりました。
iRobotの技術が相対的に陳腐化し、価格競争で不利になったのが痛手です。また、米中貿易摩擦による関税負担や、製造拠点のシフト(中国からマレーシアへ)によるコスト増も重なりました。
売上低迷と現金枯渇
ここ数年、売上が低迷。2025年も生産遅延や市場の逆風が続き、現金残高が急減しました。大規模な人員削減(従業員を半減)を実施しましたが、資金は底をつき、破産申請に至りました。
今後の見通し:中国企業が引き継ぐ
今回の申請は「pre-packaged(事前調整型)」で、主な債権者であり製造パートナーである中国のShenzhen PICEA Robotics(ピセア・ロボティクス)と事前に再建合意を結んでいます。
- PICEAが再編後のiRobotの100%株式を取得
- iRobotは非上場(プライベート企業)化
- 手続きは2026年2月までに完了予定
会社側は「事業は通常通り継続」「アプリ機能、製品サポート、従業員への支払いに影響なし」と強調しています。既存のルンバユーザーにとっては、ひとまず安心材料です。
ただ、既存株主の株式は実質的に無価値化される見込みです。
終わりに:象徴的な出来事
ロボット掃除機市場を創造したアメリカのイノベーターが、中国企業に支配権を譲る形になったのは、象徴的です。技術革新のスピードが速い家電業界で、先駆者が後れを取る厳しさを物語っています。
ルンバはこれからも私たちの家で活躍してくれるはず。iRobotの新たな章が、どう展開するのか注目です。
参考:iRobot公式発表、Reuters、Bloombergなど(2025年12月時点情報)



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