暴走するトロッコ、迫られる選択。
サンデルのトロッコ問題は、私たちが日常で直面する倫理的問いと同様に、明確な正解がない問題です。
この問題は、5人を救うために1人を犠牲にする「功利主義」と、積極的な殺人を避ける「義務論」という二つの異なる倫理観が対立し、私たちの倫理的判断の複雑さを浮き彫りにします。
- トロッコ問題に明確な「正解」がない理由
- 功利主義と義務論、2つの主要な倫理観
- 自動運転車など、現代社会にトロッコ問題が問いかけること
- サンデルがトロッコ問題を通じて伝えたいこと
結局の「正解」は?
結論から言うと、明確な正解はありません。これは哲学的な思考実験で、絶対的な答えを出すためのものではなく、倫理観や道徳の原則を議論するためのツールです。サンデル自身も、講義で学生たちに投票させたり議論を促したりしますが、特定の立場を「正解」として押しつけるわけではなく、さまざまな視点を提示します。
主な議論のポイントをまとめると:
功利主義(Utilitarianism)の視点: ベンサムやミルなどの考えに基づき、「最大多数の最大幸福」を優先。レバーを引いて1人を犠牲にし、5人を救うのが合理的。結果の合計幸福が最大化されるから。
義務論(Deontology)の視点: カントなどの考えに基づき、行動の意図や原則を重視。「人を手段として使ってはいけない」というルールから、レバーを引くのは積極的な殺人行為なので、引かない(5人が死ぬのを放置する)のが正しい。
他のバリエーションと深掘り: サンデルは問題を複雑化させて議論を広げます。例えば、「太った人を突き落としてトロッコを止める」バージョンでは、直接手を下すか否かが焦点に。文化や個人差による違いも指摘します。
サンデルはこれを通じて、「正義とは何か」を問いかけ、民主主義的な議論の重要性を強調します。実際の講義動画(Harvardの公開講座)を見ると、学生の意見が分かれ、決着がつかないのが面白いところです。
「正解のない選択」——サンデルのトロッコ問題が現代に突きつける問い
暴走するトロッコがこのまま進むと5人を轢き殺してしまう。
でも、あなたがレバーを引けば、進路が変わって1人だけが犠牲に……。
あなたなら、レバーを引きますか?

多くの人は「5人を救うためにレバーを引く」と答えます(功利主義)。
一方で「積極的に人を殺す行為は許されない」とレバーを引かない人もいます(義務論・カント)。
さらに過激なバリエーション:太った人を突き落とす
ここでは「直接手を下す」行為になるため、ほとんどの人が「それはできない」と感じます。同じ「1対5」なのに、なぜ心がこんなに変わるのか?
現代の実例:自動運転車の究極の選択

ブレーキが効かない自動運転車が、避けられない事故に遭遇したら……
AIは「乗員1人」を守る? それとも「歩行者5人」を優先?
世界中でこの「トロッコ問題」が現実のプログラム選択として議論されています。
「正義とは、私たちが共に議論し、決めていくプロセスそのものだ」
—— マイケル・サンデル
あなたなら、どうしますか?
レバーを引く? それとも、何もしない?
参考:Michael Sandel『これからの「正義」の話をしよう』、MIT Moral Machine実験



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