トランプ支持率「30%台崩壊」が個人投資家に突きつける、本当のリスクの正体

政治・社会

「トランプリスクは一時的な調整だ」——そう信じ込んでいる個人投資家が今、静かに危ない局面に入っている。

2026年4月22日、複数の世論調査がトランプ大統領の支持率を30%台前半〜半ばで示した。CNN分析によれば不支持率の平均は62%に達し、就任1期目はもちろん、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件後をも上回る過去最高水準だ。

これは単なる政治ニュースではない。市場の不確実性がどれほど長引くかを示す、構造的なシグナルだ。

ブッシュとイラク戦争——20年前に起きた「崩壊の始まり」

CNNの分析が引いた歴史的類比は、投資家として無視できない。

ジョージ・W・ブッシュ元大統領の支持率が30%台に崩れたのは、今からちょうど20年前のほぼこの時期だった。原因はイラク戦争の長期化と泥沼化だ。そして一度崩れた支持率は、その後も回復しなかった。

2026年のトランプ大統領に置き換えると、「イラク」が「イラン」になる。

【支持率の実数】2026年4月21日時点
・ロイター/イプソス:36%
・AP通信/シカゴ大NORC:33%
・ストレングス・イン・ナンバーズ/ベラサイト:35%
・NBCニュース:37%(同調査で過去最低)
・FOXニュース:41%(同調査で2017年以来最悪)
・CNNポール・オブ・ポールズ 平均不支持率:62%

9件の質の高い調査のうち8件が30%台。「FOXですら41%」というのが、この数字の重さを端的に示している。

62%という不支持率が意味するもの

支持率の低さよりも、むしろ不支持率62%という数字の方が重要だ。

支持率は浮き沈みする。だが不支持率は一度定着すると粘着性が高い。「積極的に嫌い」という層が増えると、政権はあらゆる政策で強烈な抵抗に遭う。議会での法案通過も、同盟国との交渉も、国内世論の誘導も、すべてに余分なコストがかかるようになる。

⚠️ 注意点
この不支持率62%は、1期目の最悪期(63%、ピュー調査)や1月6日後(62%、CNN調査)と並ぶ水準だ。当時と違うのは、「複数の調査の平均値」がこのレベルに達しているという点で、一時的な急落ではなくトレンドとして定着しつつある可能性がある。

イランが「解決できない構造」になっている理由

支持率崩壊の直接的な引き金は、イラン情勢の膠着だ。ここの構造を整理しておく。

4月21日、トランプ大統領は国家安全保障チームをホワイトハウスに集め協議を行った。焦点は停戦期限が迫るイランへの対応。バンス副大統領はパキスタンへの出発を控えていたが、肝心のイラン側から数日前に送った提案への返答がまったくない状態だった。

【イラン側が動けない構造的な理由】
①新最高指導者モジタバ・ハメネイ師が表舞台に姿を現さず、部下が「意向の推測」で動いている状態
②ウラン濃縮の将来的な扱いと現在の濃縮ウラン備蓄量について、イラン政府内部で合意が取れていない
③交渉担当者にどこまでの権限を与えるかについても意見が割れている

結果としてトランプ氏は、終了日を明示しない形での停戦延長という曖昧な選択をした。イランの国会議長顧問は「敗者が条件を指定することはできない」と応じた。外交的には完全な膠着状態だ。

ここで重要なのは、この問題が「時間が解決してくれる類のもの」ではないという点だ。イラン内部の権力移行が落ち着かない限り、交渉の相手方が定まらない。それがいつになるかは誰にもわからない。

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「二正面作戦」という政治的体力の消耗

イラン問題だけなら、まだ管理できたかもしれない。だが現在のトランプ政権は、関税交渉という別の「二正面目」を同時に抱えている。

中国・日本・欧州・カナダとの関税交渉がそれぞれ異なるステージで進行中だ。交渉というのは政治的な信用(クレジビリティ)を担保に成立するゲームで、「この大統領は本当にやる」という威圧力があってはじめて相手が妥協する。

問題の構造
支持率が崩れると、威圧力が低下する。「どうせ国内世論が許さない」と相手国に見透かされた瞬間に、交渉カードは急速に価値を失う。
イランとの停戦を延長せざるを得なかった背景に「不評を買っている紛争の再燃への警戒感」があったと報道されているが、これが事実なら、トランプ氏はすでに国内世論によって行動を制約されている。

交渉の相手方(中国も含めて)がこの構造を読んでいない、と考える方が不自然だ。

「一時的な調整」という呪文が、個人投資家を殺す

テレビやSNSでは今も「トランプリスクは一時的な調整」「長期保有なら気にしなくていい」という声が多い。

その言葉が正しい局面もある。自然災害、企業の一時的な不祥事、予想外の金利変動——これらは確かに「時間が解決してくれる」リスクだ。

だが今起きていることは、構造的な政治リスクだ。

「一時的な調整」と「構造的リスク」の違い

一時的な調整:原因が特定でき、解消のタイムラインが見える。
構造的リスク:原因が複合的で、解消のタイムラインが見えない。市場は「不確実性そのもの」に対してリスクプレミアムを乗せ続ける。

イランの権力移行がいつ完了するかは不明。支持率が回復するかも不明。複数の関税交渉がいつ妥結するかも不明。これらが同時並行で「不明」のまま続く状態は、「一時的」とは呼ばない。

そして、個人投資家が「一時的な調整だから買い増しのチャンス」と信じて動いている間、機関投資家はポートフォリオのリスクパラメーターを静かに変えている。これは陰謀論ではなく、彼らの職務上の義務だ。

【なおの独自考察】30年間で見てきた「政治リスクの長期化」パターン

30年以上個人で投資してきて、湾岸戦争、イラク戦争、リーマンショック、コロナショックを経験した。それぞれのリスクには性格の違いがある。

一番やっかいだったのは、「解決の形が見えないまま続く政治リスク」だ。リーマンは恐ろしかったが、問題の輪郭は明確だった。コロナは前例がなかったが、「ワクチン」というゴールが存在した。

今回の状況は、個人的にはイラク戦争後の長期停滞期に近い嫌な既視感がある。あの時も「もうすぐ解決する」という観測が何度も出て、そのたびに裏切られた。そして市場は「不確実性の継続」に対して長い間、リスクプレミアムを乗せ続けた。

💡 今の局面で自分が意識していること

①「次のカタリスト」を待たない。見えないから。
②ポジションのリスク量を「普段より1段階下げた水準」で管理する。
③「一時的な調整論」で買い増しを正当化しない。特に信用・レバレッジは。

相場が正しくなるのは必ずいつかだ。ただ、「いつか」が「いつ」かは誰にもわからない。その不確実性に対してお金を払う(ポジションを落とす)のは、臆病ではなくリスク管理だと今の自分は思っている。

もちろん、トランプ氏がイランとの大型合意を電撃的にまとめ、関税交渉も同時決着、支持率がV字回復——という「最高のシナリオ」もゼロではない。彼はサプライズを起こすのが得意だ。

ただ、その確率と現在の市場の織り込みを天秤にかけたとき、今は慎重側に傾けておくのが30年投資家としての正直な判断だ。

※上記は個人の見解です。投資判断は自己責任でお願いします。

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カテゴリから読み解く個人投資家が負ける構造

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