「踏み上げの夢と折れた心」創作

第一章：哀愁の予感

その日、私はいつものようにノートパソコンの前に座り、チャートとにらめっこしていた。画面に映るのはTOWA（6315）の株価。連日の下落が続き、信用取り組みのデータからは何とも言えない哀愁が漂っていた。私は投資歴30年の自称「初級者」だが、こういう雰囲気には敏感だ。ネット掲示板や記事を漁り、情報を集める中で見つけたのが「TOWA（6315）の哀愁漂う信用取り組みと、遠ざかる踏み上げの夢」というタイトルの記事だった。

記事は、信用買い残の重さと売り圧力の強さを指摘し、踏み上げ（ショートスクイーズ）の可能性が遠のいていると結論づけていた。私もその分析に共感した。チャートを見れば、ジリジリと下がる株価がまるで疲れ果てた旅人のように見えた。「これは空売りのチャンスだ」と直感が囁いた。

私は慎重に計画を立てた。両建てでリスクを抑えつつ、空売りを仕掛ける。株価がさらに下がれば利益を確定し、もし予想が外れても損失は限定される。完璧な戦略だと自負していた。夕方、注文を確定させると、心に小さな達成感が芽生えた。「これでいい。これで勝てる」と自分に言い聞かせた。

第二章：突然の雷鳴

翌朝、目覚めた私はコーヒーを手にしながらスマホで市場を確認した。すると、目に飛び込んできたのは信じられない光景だった。TOWAの株価が前日比＋186円、12.39％の急騰。1687円という数字が眩しく輝いている。私は一瞬、目を疑った。「何？どうして？」と声に出して呟きながら、慌ててニュースをチェックした。

そこには、昨夜遅くに出たIR（適時開示情報）の文字が躍っていた。TOWAが新たな事業展開や業績上方修正を発表したらしい。詳細を読む間もなく、私の頭の中は混乱で埋め尽くされた。「昨日の記事はなんだったんだ？」「踏み上げの夢が遠ざかるとか言ってなかったか？」と、心の中で叫んだ。

両建てのおかげで損失は7万円程度に抑えられていたが、それでも痛い。7万円あれば、新しいモニターを買えたかもしれないし、家族と美味しいディナーを楽しめたかもしれない。

それ以上に私の心を抉ったのは、自分の判断への過信だった。「あの記事を鵜呑みにした自分が悪いのか？」「いや、市場が読めなかっただけだ」と、自問自答が止まらない。

第三章：折れた心の行方

私は椅子に深く腰掛け、窓の外を見つめた。外は曇り空で、まるで私の気持ちを映し出すかのようだった。記事をもう一度読み返してみた。確かにそこには「踏み上げは遠のく」というニュアンスがあった。でも、よく考えれば、それはあくまで「現時点のデータに基づく推測」に過ぎなかった。市場は生き物だ。IR一つで状況が一変するのは、投資の世界では日常茶飯事だ。

「心が折れました」と呟いたのは、その日の夜だった。SNSに書き込むつもりはなかったが、感情が溢れて指が勝手に動いた。フォロワーからの反応は様々だった。「あるあるだよ」「次があるさ」と励ましてくれる人もいれば、「IRなんて読めないよ」と同情してくれる人もいた。でも、私の中では何かが決定的に変わった気がした。

投資はゲームじゃない。勝ち負け以上に、自分自身との戦いだ。私はあの記事に頼りすぎて、自分の目で市場を見ていなかったのではないか？