2026年4月4日|なお@HAVE MARCY
トランプ大統領の支持率が35%まで急落し、過去最低を更新した。対イラン軍事作戦の泥沼化、一族の「戦争で大儲け」疑惑、欧州の離反、そして原油112ドル突破――。
この一連の流れが、日本の個人投資家のポートフォリオに何を意味するのか。30年以上相場を見てきた視点から、「情報を消費する側」ではなく「構造を読む側」に回るための分析をお届けする。
支持率35%――トランプ政権に何が起きているのか
ロイターが3月24日に発表した世論調査で、トランプ大統領の支持率は前回から4ポイント低下の36%、その後のハーバード大学/ハリス調査では35%を記録し、2期目の最低を更新した。
注目すべきは「岩盤支持層」の崩壊だ。2024年大統領選でトランプ氏に投票した層の支持率は、就任時の93%から84%、そして直近では76%まで低下。「強く支持する」割合も58%へ下がった。白人福音派——かつてのトランプ最強の盾——すら揺らいでいる。
① ガソリン価格の高騰:1ガロン4ドル突破(約160円/L相当)で生活直撃
② 対イラン軍事作戦への反発:イラン情勢対応の支持率はわずか28%
③ 「王はいらない」デモ:3月28日に全米で約800万人が参加し過去最大規模に
投資家にとって重要なのは、この支持率低下が「一時的なノイズ」ではなく、11月の中間選挙に直結する構造的リスクだという点だ。PwCの分析では、投票先調査で民主党が共和党に5ポイントリードしており、下院の多数派が入れ替わる「ねじれ議会」が有力シナリオとなっている。
「戦争で大儲け」疑惑の構造を解剖する
デイリー新潮が報じた「中東戦争で大儲け」疑惑。これは個別の不正行為の話ではない。権力と市場が直結する構造そのものの話だ。
フィナンシャル・タイムズの報道によれば、トランプ氏がSNSに「イランと和平交渉が進んでいる」と投稿するわずか5分前に、S&P500先物で約15億ドル(約2,250億円)分の買いが入り、同時に石油先物が大量に売り浴びせられた。
さらにPolymarket(予測市場)では、攻撃直前に「的確な賭け」を繰り返すアカウントの存在がCNNに報じられ、民主党マーフィー上院議員が「信じられないほどの腐敗だ」と声を上げている。
加えて、トランプの娘婿クシュナー氏の投資会社はサウジアラビアの政府系ファンドから20億ドルの出資を受けており、さらに50億ドル超の追加調達を目指しているとされる。和平交渉の当事者が、交渉相手に出資を求めている――これを利益相反と呼ばずして何と呼ぶのか。
上記の先物取引の動きについて、取引者の身元は特定されておらず、アルゴリズム取引の可能性も排除されていない。「疑惑」の段階であり、確定事実ではない点に注意が必要。
欧州の離反――「我々の戦争ではない」が意味すること
トランプ氏はSNSで欧州諸国に向け、こう吠えた。
これに対し、マクロン仏大統領は「軍事的にホルムズ海峡を占領するのは非現実的だ」と正面から批判。英国主導で約40カ国がホルムズ海峡の再開に向けた外相級会合を開催し、独自の枠組みを構築し始めた。米国は協議に参加していない。
さらにFTが報じたところによれば、トランプ氏は欧州に対してホルムズへの海軍派遣を要求し、拒否されるとウクライナへの武器供給停止をちらつかせたという。「ホルムズに協力しないなら、ウクライナも助けない」――同盟関係を人質に取る手法だ。
投資家として見るべきポイントは、「米国が世界秩序の保証人であるという前提」が崩れ始めていることだ。この前提の揺らぎは、ドル・米国債・米国株への長期的な信認に関わる構造変化の兆候となり得る。
原油112ドル、日経平均急落――日本の個人投資家への直撃ルート
NY原油(WTI)は4月2日時点で112ドルに到達した。ホルムズ海峡は開戦から5週間、事実上の封鎖状態が続いている。約2,190隻の商船が湾内に足止めされ、日本関係船舶は約44〜45隻に上る。
3月30日、日経平均は一時前日比5.3%安となり、年初来安値を付けた。2026年の上昇分がほぼ帳消しになった瞬間だ。
①エネルギーコスト:4月1日で政府の電気・ガス補助金が終了。原油高が家計に直接転嫁される新局面に突入
②物価上昇:野村證券の試算では原油120ドル高止まりでコアCPIが+3.3%まで上昇、ピーク時は前年比4%超の可能性
③サプライチェーン:ナフサ・エチレン等の石油化学原料も中東産が多く、自動車・化学・食品産業に波及
④為替:ドル円は159円台後半。円安と原油高のダブルパンチで輸入コスト急増
ゴールドマン・サックスは、今後12カ月以内に米経済がリセッションに陥る確率を30%に引き上げた。野村證券の試算では、4月末までに停戦が成立しない場合、日経平均は約5,700円安(10.1%下落)の可能性があるという。
4月6日の「最後通牒」と3つのシナリオ
トランプ大統領は4月6日(東部時間午後8時=日本時間4月7日午前9時)を期限として、イランのエネルギー施設への攻撃を示唆している。この期限をめぐり、市場は3つのシナリオを想定している。
シナリオA:再延長・条件付き停戦
交渉の「進展」を理由に期限延期。原油は一時的に下落するが、ホルムズ再開には至らず供給不足は継続。日経平均は小幅反発。
シナリオB:攻撃実施
ハルク島・電力施設への攻撃でイランが報復、海峡通航がさらに制限される。ゴールドマン・サックスの試算では原油150ドル超のリスク。日経平均は急落局面に。
シナリオC:停戦成立・ホルムズ再開合意
最も市場が歓迎するが、アナリストは「再開後も混乱は数カ月継続」と指摘。「価格急落=リスク解消」ではない。
【30年投資家の視点】「暴走を止められる唯一の存在」は、あなたの冷静さだ
30年以上相場を見てきて、はっきり言えることがある。
市場が最もパニックになるのは、「政治リーダーが合理的に動いていない」と感じた瞬間だ。
トランプ氏の発言は日替わりで変わる。「撤退すれば海峡は自動的に開く」と言った翌日に「ホルムズが開かない限り停戦しない」と言い、さらにその翌日の演説で「2〜3週間で攻撃を終結する」と言う。この人物の言葉でポジションを取ること自体が、最大のリスクだ。
だからこそ、個人投資家が今やるべきことは明確だ。
🧭 今、個人投資家がやるべき3つのこと
❶ 「停戦するかしないか」に賭けるな
どちらに転んでも致命傷にならないポジションサイズに落とす。特に信用取引のレバレッジは即座に見直すべきだ。
❷ 中間選挙までのタイムラインで考える
支持率35%の大統領は、11月の中間選挙前に必ず「バラマキ」を打つ。物価高対策・減税の前倒し・政策転換のいずれかが来る。その転換点を待てるかどうかが勝負。
❸ 日本固有の構造に目を向ける
高市政権の骨太の方針(6月)、消費税食料品ゼロ化(2027年4月予定)、日銀の利上げ判断――。トランプの暴走に巻き込まれず、日本独自のカタリストで勝負できる銘柄は確実に存在する。
デイリー新潮は「暴走を止められる唯一の存在」として中間選挙を挙げた。正しい分析だと思う。しかし、あなたのポートフォリオの暴走を止められるのは、マーケットでもトランプでもなく、あなた自身の冷静さだけだ。
恐怖で売るな。興奮で買うな。構造を読め。
それが、30年間生き残ってきた投資家の、たった一つのルールだ。
