日経平均とトルコBIST100の共通点|通貨暴落で作られる株高の正体

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「日経平均が史上最高値を更新した」——2026年に入ってからこの見出しを何度も見てきた。2月26日には5万9,332円という新値を付け、4月中旬の現在も5万7,000円台で推移している(要出典確認)。テレビも新聞もYouTubeも、「日本株は強い」「資産が増えた」と歓声を上げている。

だが、その数字を「儲け」と呼ぶ前に、トルコを見ろ。トルコのBIST 100指数も記録的な高値を更新し続けている。トルコリラ建てで見れば、個人投資家は「大儲け」したはずだ。ところが現実は——トルコリラは1ドル=44.5リラという過去最安値に沈み、ドル建てで見たトルコ株はマイナスリターンという惨状になっている(要出典確認/最新情報要確認)

「通貨が溶けていく国では、株価の最高値更新は儲けではなく、通貨安を隠すための装置になる」——これが、30年以上相場を見てきた私が、いまの日経平均5.7万円に対して抱いている最大の違和感だ。リクエストに応えて書く。これは個人投資家に知っておいてほしい「搾取の構造」の話である。

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トルコで実際に起きたこと:BIST 100最高値の裏側

まずファクトを押さえる。トルコの株式市場で何が起きているのか。

📊 トルコの数字(2025-2026年)

  • BIST 100指数:2026年2月に1万3,800超、2026年1月に1万2,700超と記録更新を続ける(要出典確認)
  • リラ建てリターン:2025年の年間騰落率は約+14%(要出典確認)
  • トルコリラ/ドル:2026年4月に1ドル=44.5リラの記録的安値(要出典確認)
  • ドル建てリターン:リラが対ドルで18〜20%下落したため、ドル建てBIST 100はマイナス(要出典確認)
  • インフレ率:2025年時点で30%台。賃上げはインフレ率に追いついていない

数字が示しているのはシンプルだ。「株価は上がった。しかし、その株で買える外貨・外国商品の量は減った」。トルコの個人投資家が株で10%儲けても、同じ期間にリラが18%下落していれば、iPhone1台の値段にも追いつかない。輸入品・海外旅行・ドル建て資産は、株で儲けた「はず」の額を上回るペースで高くなっていく。

これは「株で儲けた」のではない。「通貨安で目減りするのを株で一部埋め合わせているだけ」である。そして、リラの下落速度が株価上昇速度を上回る期間が続けば、株を持っていてもなお資産は実質減少するのがトルコの現実だ。

日経平均5.7万円は、本当に「豊かになった証拠」なのか

ここからが本題だ。トルコの話を他人事として聞いていた日本の個人投資家に、同じロジックを日経平均に当てはめてみてほしい。

⚠️ 日本の数字(2022年〜2026年)

  • 日経平均:2022年3月時点の約2万7,000円 → 2026年2月26日に5万9,332円の史上最高値(要出典確認)
  • ドル円:2022年3月時点の1ドル=118円台 → 2025年11月に157.89円、2026年4月現在は155円前後で推移(要出典確認)
  • 円建て上昇率:約+117%(2.2倍)(推測ですが、2.7万→5.9万で試算)
  • ドル円の円安率:約32%(118円→156円)(推測ですが、試算)
  • 日本の実質金利:政策金利0.75%に対し賃金ベースのインフレは3.7%程度、実質金利は約マイナス3%との分析あり(要出典確認/朝倉慶氏の分析を引用)

円建てで見れば、日経平均はこの4年で2倍以上になった。「新NISAでオルカンよりも日本株のほうが良かった」と言う人もいる。だがドル建てで見ると、景色はまったく異なる。

ドル建て日経平均は2026年1月14日に341ドル台の10年最高値を付けたとされる(要出典確認)。たしかにドル建てでも最高値ではある。しかし、円建ての「倍増」のペースには程遠い。円建ての派手な数字のうち、約3割は「円の価値が下がっただけ」の寄与だと理解しておく必要がある。

❌ この4年で何が起きているのか(構造の本質)

① 日銀は実質的に緩和的な政策を維持し、実質金利はマイナス圏
② 円を持っているだけで年数%の購買力が目減りする状態
③ 「現金よりマシ」という理由で株・不動産・ゴールドに資金流入
④ その結果、円建て資産価格が上昇する(見かけの株高)
⑤ しかし通貨価値自体が下落しているため、実質購買力は増えていない

これはトルコで起きていることと、程度の差こそあれ、方向はまったく同じだ。トルコは年30%インフレ・リラ年20%下落というハードモードだが、日本はマイルド版の同現象の中にいる。そして重要なのは、「ハードモード」と「マイルド版」は構造的に地続きだということだ。

なぜ日本のメディアは「ドル建て日経平均」を大きく報じないのか

ここが「搾取の構造」の核心である。答えはシンプルだ——円建ての数字のほうが、関係者全員にとって都合が良いからだ。

🔍 誰が「円建て最高値」の報道で得をするか

  • 証券会社・金融機関:「株高=新規客獲得チャンス」口座開設が伸びる
  • 運用会社:インデックス投信・ETFへの資金流入で信託報酬が増える
  • 経済メディア:「史上最高値」は最強の見出し、クリックが取れる
  • 政府・日銀:国民が「豊かになった」と錯覚すれば、政策への不満は出にくい
  • 海外ヘッジファンド:円売り+日本株買いの「為替ヘッジ込み」で利ざやを取る

この構図で唯一「円建て最高値」の報道だけを信じて資産全体を見直さない者が、損をする。誰か? 言うまでもなく普通の個人投資家だ。円建ての証券口座を眺めて「増えた」と喜んでいるうちに、ガソリン、食料品、海外旅行、iPhone、ドル建ての外国株、すべての実質価格が上がっていく。

トルコの個人投資家も最初は喜んでいたはずだ。「株が上がった」「老後は安心だ」。気付いたときには、海外旅行も、輸入品も、外貨預金も、届かない場所にあった。通貨が溶けていく国の個人投資家は、株で儲けているフリをしながら、実は年々貧しくなっていく——この現象を歴史から学ばずに日経最高値を喜んでいる人間は、率直に言って危うい。

個人投資家として今、何を見るべきか

✅ 実践チェックリスト:通貨安環境での資産防衛

  1. 円建てだけでなくドル建て・ゴールド建てで自分の総資産を評価する
    月1回でいい。証券口座の円表示の横に、ドル換算・金換算の数字を書き込む習慣を付ける。
  2. 通貨分散を最低限確保する
    円100%の資産配分は、円安と日本国内インフレのダブルパンチに無防備。外国株・外貨建て債券・ゴールドで最低でも資産の3〜5割は非円資産にする選択肢を持つ。
  3. 「日経平均が上がった=儲かった」という思考停止を捨てる
    円建ての数字の何%が「実力」で、何%が「通貨安の寄与」かを切り分ける。
  4. 実質金利を常に意識する
    名目金利マイナスインフレ率=実質金利。これがマイナスの国の現金・国内債券は、持っているだけで目減りする資産。
  5. 「積立投資しているから大丈夫」を疑う
    日本株インデックス・円建てオルカン・円建てS&P500、いずれも円の価値が前提。前提が崩れれば評価額も崩れる。

これは「円を捨てて外貨に逃げろ」という話ではない。生活費のベースは円で必要だし、極端な外貨シフトには別のリスクもある。ただ、「円建ての最高値」を鵜呑みにして資産全体を円に寄せきる状態が、一番危険だという話だ。

なお@HAVE MARCYの視点

30年以上相場を見てきて、これだけは言える——「史上最高値」の報道は、天井圏で最も声が大きくなる。バブル期末期の1989年も、2000年のITバブル時も、株クラ・メディア・証券会社、全員が「まだ上がる」と叫んでいた。

今回の円安相場で違うのは、「通貨そのものが溶けている」という要素が加わっている点だ。株価の最高値が、企業収益の成長で作られているのか、それとも通貨価値の下落で嵩上げされているのか——この2つを切り分けて見ている個人投資家は、正直に言うと非常に少ない。

トルコは私たちにとって「遠い国の話」ではなく、「10年後の日本を映す鏡」かもしれないというくらいの緊張感を持って見るべきだ。リラ建てで最高値を更新しても幸せになれなかったトルコの個人投資家。この前例を知っていて、なお日経最高値の報道だけで思考停止するのか? そこが分かれ道だと、私は思っている。

まとめ:通貨が溶ける国で「名目最高値」は罠になる

📌 この記事のポイント

  • トルコBIST 100はリラ建てで最高値更新中だが、ドル建てではマイナスリターン。通貨安が株高を上回ると資産は実質目減りする
  • 日経平均も2022年〜2026年で円建てでは約2倍になったが、そのうち約3割は「円の価値下落」の寄与と見るべき
  • 「円建て最高値」の報道で得をするのは証券会社・運用会社・メディア・政府。損をするのは円建ての数字だけを見ている個人投資家
  • 実践的な資産防衛は、ドル建て・ゴールド建てで資産を定期評価する習慣と、最低限の通貨分散から始まる
  • トルコは遠い国の話ではなく、程度の差はあれ日本の未来を映す鏡。歴史から学ばない個人投資家は、構造的に搾取される側に置かれる

最後に一言。「日経平均が上がった」と喜ぶこと自体は悪いことではない。ただ、その「上がった」の内訳を、円建てとドル建てとゴールド建てで3回は見直す——それだけで、あなたは「通貨が溶ける国で搾取される側」から、一歩だけ抜け出せる。それが、30年以上この相場で生き残ってきた私からのリクエストへの回答だ。

※本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。掲載数値は執筆時点のもので、最新情報は各データ提供元でご確認ください。

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カテゴリから読み解く個人投資家が負ける構造

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