AIが「村上春樹風」の小説を書くと著作権侵害になる? アンソロピック訴訟から考える

岡目八目

AIが「村上春樹風」の小説を書くと著作権侵害になる? アンソロピック訴訟から考える

村上春樹の独特な文体や世界観に魅了された人は多いでしょう。では、AIに「村上春樹風」の小説を書かせたら、著作権侵害になるのでしょうか? 2025年9月、米新興AI企業アンソロピックが作家らとの著作権訴訟で約2200億円(15億ドル)の和解に合意したニュースを背景に、この問題をわかりやすく解説します。AIと著作権の関係、そして村上春樹のような作家の作品がどう扱われるかを探ります。

1. アンソロピック訴訟とは? 2200億円和解の背景

2024年8月、作家や出版社がアンソロピック(生成AI「クロード」の開発企業)を提訴。生成AIの学習に、海賊版サイト(例:Library Genesis)から違法に取得した約700万冊の書籍が無断使用されたとして、著作権侵害が主張されました。米カリフォルニア州連邦地裁での審理の末、2025年9月にアンソロピックは15億ドルの和解金を支払うことで合意。この金額は、AI関連の著作権訴訟で過去最大規模です。

  • 違法なデータ取得:海賊版サイトから取得した書籍データが問題視され、データセットの破棄も和解条件に。
  • フェアユースの議論:2025年6月の同地裁の判決では、AIの学習自体は「フェアユース」(公正使用)に該当する可能性が認められたが、違法データの使用は侵害と判断。
  • 影響の大きさ:和解金は他のAI企業(OpenAI、Metaなど)への警告となり、データ取得の合法性が今後の焦点に。

では、この訴訟が「村上春樹風」の小説を書くAIにどう影響するのでしょうか?

2. 村上春樹風の小説と著作権の関係

村上春樹の小説は、シンプルで詩的な文体、孤独な主人公、ジャズや猫のモチーフ、夢と現実の融合が特徴です。では、AIが「村上春樹風」の小説を生成すると、著作権侵害になるのでしょうか? ポイントを整理します。

(1) 著作権法の基本:何が保護される?

日本の著作権法(第2条)や米国の著作権法では、具体的な表現(文章、キャラクター、プロット)が保護されますが、文体やテーマは保護されません:

  • 保護されるもの:『ノルウェイの森』の具体的な文章、キャラクター(直子、ワタナベ)、プロット。
  • 保護されないもの:孤独や疎外感というテーマ、比喩的な文体、村上春樹特有の「雰囲気」。

つまり、「村上春樹風」の雰囲気で書くことは、法的には問題になりにくいのです。

(2) AIが生成する場合のリスク

AIが「村上春樹風」の小説を書く場合、以下の2つの観点で著作権侵害のリスクが考えられます:

  • 学習データの合法性:アンソロピックの訴訟では、違法に取得された書籍データ(村上春樹の作品が含まれる可能性も)が問題でした。もしAIが村上春樹の著作(例:『1Q84』)を無断で学習に使用していた場合、データの使用自体が著作権侵害になる可能性があります。日本では、商業目的での無断使用は特にリスクが高いです。
  • 生成物の内容:AIが村上春樹の具体的な文章やキャラクター(例:青豆や羊男)を再現すると、侵害になる可能性があります。逆に、一般的な「村上春樹風」(例:都会の孤独な主人公がカフェで不思議な会話をする)の小説なら、侵害にはなりにくい。ただし、極めて類似した表現はリスクを伴います。

(3) 商業利用の影響

個人的にAIで「村上春樹風」の小説を生成して楽しむ分にはリスクは低いですが、出版や販売など商業利用すると、村上春樹や出版社(新潮社、文藝春秋など)が法的措置を取る可能性が高まります。特に日本では、著名作家の著作権が厳格に保護される傾向があります。

3. アンソロピック訴訟が示す「対象の絞り込み」

アンソロピックの訴訟では、著作権侵害の対象が以下のように絞られました:

  • 違法に取得された書籍:海賊版サイトからのデータが焦点。村上春樹の作品もこうしたデータセットに含まれていた可能性がある。
  • 商業的価値の高いコンテンツ:ベストセラー作家や出版社の作品が訴訟の中心。村上春樹のような世界的作家は、模倣リスクが目立ちやすく、訴訟対象に絞られやすい。
  • 作家の動機:文学作家は、自身の文体や作品の独自性を守るため、積極的に訴訟を起こす。物語(フィクション)が特に問題視されやすい。

このため、村上春樹風の小説を生成するAIが、違法データを使用したり、具体的な作品に依拠したりすると、訴訟リスクが高まります。

4. 他のAI企業への波及

アンソロピックの和解は、OpenAI(ChatGPT)、Meta、Microsoftなどにも影響を与えます:

  • 類似の訴訟:OpenAIはニューヨーク・タイムズや作家組合から、Metaは作家や音楽レーベルから提訴されており、違法データ使用が問題視されています。村上春樹の作品を無断で学習に使用した場合、これらの企業も訴訟対象となる可能性が。
  • データ取得の透明性:業界全体で、ライセンス契約や合法データへの移行が加速。たとえば、OpenAIはアクセル・シュプリンガーとライセンス契約を結んでいます。
  • 日本の状況:朝日新聞や日経新聞がAI事業者を提訴(2025年8月、44億円請求)しており、村上春樹の作品も日本で同様の訴訟対象になる可能性がある。

5. どうすれば安全に「村上春樹風」を楽しめる?

AIで「村上春樹風」の小説を楽しみたい場合、以下のポイントに注意しましょう:

  1. 学習データの確認:AIが村上春樹の著作を正規にライセンス契約で使用しているか確認。海賊版データの使用はNG。
  2. 生成物のチェック:具体的な文章やキャラクターの再現を避け、一般的な「雰囲気」に留める。
  3. 非営利利用:個人で楽しむ分にはリスクが低い。商業利用(出版など)は慎重に。
  4. 法的アドバイス:商業目的の場合は、弁護士や著作権専門家に相談を。

6. まとめ:村上春樹風は「雰囲気」ならOK、でも慎重に

AIが「村上春樹風」の小説を書くことは、文体やテーマの模倣にとどまるなら、著作権侵害にはなりにくいです。ただし、AIが村上春樹の著作を無断で学習データに使用したり、具体的な文章やキャラクターを再現したりすると、侵害リスクが高まります。アンソロピックの2200億円和解は、AI企業にデータの合法性を求める圧力を強め、特に村上春樹のような著名作家の作品は訴訟対象として絞られやすいことを示しています。

今後、AIと著作権の議論はさらに進化しそうです。村上春樹の静謐な世界をAIで楽しむなら、合法性と倫理を意識して、安心して創作を楽しみましょう!

補足
– 情報は2025年9月6日時点の報道(時事通信など)に基づいています。
– 具体的な村上春樹の作品がアンソロピックのデータセットに含まれていたかは公開情報では不明ですが、ベストセラー作家の作品は訴訟で注目されやすいです。

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