毎日新聞の世論調査で、高市内閣の支持率が53%に下落した。発足以来最低であり、2カ月連続の下落だ。ニュースとしてはそれだけの話だが、投資家として30年以上この国の市場を見てきた立場から言うと、本当に注目すべきは支持率の数字そのものではない。「政策相場」に乗り続けている個人投資家に、今何が起きているかだ。
この記事でわかること
- 内閣支持率と株価の「本当の関係」
- 「政策相場」が個人投資家に仕掛ける構造的な罠
- 支持率下落後に市場で何が起きやすいか
- 30年投資家が今どう動いているか
政権が安定すると株価が上がる、支持率が下がると下がる——よく聞く話だ。だがこれは半分しか正しくない。
構造的な整理
株価が上がるのは「支持率が高いから」ではなく、支持率が高い=大型政策が通りやすい=市場が期待を先取りするから。つまり株価が動くのは「支持率」ではなく「政策実現確度の変化」だ。支持率は、その変化を知る間接指標に過ぎない。
高市政権を例に取ると、昨年10月の発足直後から支持率は3カ月連続で65%超を維持した。この期間、日経平均は「高市トレード」で動いた局面があった(要出典確認)。だが重要なのは、そのトレードを仕掛けたのが誰かということだ。
機関投資家は政策期待を先に買い、個人投資家が追いかけてくるところで売り抜ける。「支持率が高い→買い」という単純な図式は、個人が最後に高値掴みをするための構造そのものだ。
政策相場という言葉が好きなのは、証券会社のアナリストとメディアだ。なぜか。
「政策相場」の収益構造
- アナリスト:「政策期待で買い」のレポートで注目度と広告収入を得る
- 証券会社:個人が頻繁にトレードするほど手数料収入が増える
- 機関投資家:個人の買いを利用して高値で売り抜ける
- 個人投資家:最後に残ったポジションを抱えて損をする
今回の支持率下落(58%→53%、2カ月連続低下)は「政策実現確度の低下」として市場に読まれうる。だが、その情報を機関投資家はすでに織り込んでいる。個人が「支持率が下がった、売り時か」と判断したタイミングは、すでに機関が動いた後だ。
これは今に始まった話ではない。安倍政権のアベノミクス期も、岸田政権の支持率急落期も、情報の非対称性という構造は変わっていない。政策を語るアナリストも、世論調査を報じるメディアも、その構造の外にはいない。
今回の経緯を整理する。
高市政権の支持率推移(要出典確認:各社世論調査ベース)
- 2025年10月 内閣発足 → 支持率65%超が3カ月続く
- 2026年1月 初めて60%を下回る
- 2026年2月 衆院選で自民大勝 → 60%台に回復
- 2026年3月 再び下落開始
- 2026年4月 53%に(発足以来最低)、不支持率33%に上昇
このパターンは見覚えがある。選挙直後は「政権安定」として株が買われ、半年後に政策の実体が明らかになると失望売りが入る。1990年代から数えて、このサイクルを個人投資家は何度繰り返してきたか。
投資家として注意すべき点
支持率下落が「下げ相場」を必ず意味するわけではない。問題は「期待の剥落」のタイミング。期待で買われた局面が長ければ長いほど、失望の落差も大きくなる。高支持率が続いた高市政権では、その落差を警戒する必要がある。
「政治を読んで株を買うな」と30年間言い続けた理由
正直に言う。私は政策相場を利用することが、個人投資家に最も向かないトレードスタイルだと思っている。
なぜか。政策の実現可能性を評価するには、永田町の人脈と官僚との対話チャンネルが必要だ。個人にそれはない。支持率の数字だけを見て判断するのは、試験問題の答えを聞かずに点数だけ見て「この学生は優秀か」を判断するようなものだ。
今回の53%という数字が示しているのは「国民が少し不満を持ち始めた」という事実だけ。何の政策が、どう変わり、誰が損得を受けるかは、世論調査では分からない。
私が今やることは変わらない。個別企業の実力を見て、政治リスクはヘッジとして認識し、余計な売り買いをしない。支持率が下がったからといって、狼狽売りをする理由は何もない。政治に踊らされるのを待っているのが、機関投資家だということを忘れないでほしい。
「支持率が下がった=売り」という反射的な行動は機関投資家の望む動きだ。では、どう対処するか。
政治リスク局面での実践的スタンス
- 反射的な売り買いをしない——情報の遅延分だけ、すでに機関は動いている
- 政策依存度の高いセクターを点検する——防衛・原子力・インフラ等、政策期待で評価された銘柄は特に注意
- 「何が期待されていたか」を確認する——支持率下落の本質は「期待の剥落」。どんな政策の期待値が下がったかを見る
- 長期保有銘柄はノイズとして処理する——四半期で動く政治に、10年保有の銘柄を合わせる必要はない
世論調査は「空気」を数値化したものだ。株式市場はその空気より数ヶ月先を走っている。支持率のニュースを見て「今から対応しよう」と動く個人は、機関投資家から見れば絶好の相手だということを、まず頭に叩き込んでおくべきだ。
📌 この記事のまとめ
- 高市内閣の支持率は53%に下落(発足以来最低、2カ月連続低下)
- 支持率と株価の連動は「間接指標」に過ぎず、機関は先に動いている
- 「政策相場」は個人が最後に高値掴みをする構造的な罠
- 支持率ニュースに反応して売り買いすること自体が、機関の戦略にはまる行為
- 長期投資家は政治ノイズに動じず、企業の実力評価に集中すべき
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