「AIバブル崩壊」を叫ぶ人間が見落としている、本当の怖い話

コラム・読み物

「AIはまだ序章」と言う人間と「もうバブルだ」と言う人間が、毎日どこかで言い合っている。正直、どちらの言い分も分かる。分かるから余計に気持ち悪い。

「バブルかどうか」という問い自体が、すでに答えを半分持っている

こういう議論が Reddit や投資 YouTube に溢れ始めたとき、たいてい相場はどちらかの端にいる。静かに上がり続けているときは誰も「バブルか?」なんて聞かない。聞くのは、何かが引っかかり始めているからだ。

個人投資家の界隈を見ていると、ここ最近で明らかに空気が変わってきた気がしている。2023年の ChatGPT ショック以降、「AI関連株を持ってれば正義」みたいな雰囲気があった。エヌビディアを持っていること自体がひとつのステータスで、決算ごとに「やっぱり強かった」と確認作業みたいな相場が続いていた。でも、今はちょっと違う。確認作業に「でも、いつまで?」という声が混じり始めた。

強気派の主張ロジック

AI需要は「バズワード」ではなく設備投資として実体化している、というのが基本線。マイクロソフト・アマゾン・グーグルのデータセンター投資額はいずれも前年比で大幅増で、これは株価じゃなくてコンクリートとケーブルに換算できる話だ。日本側で言えば、ラピダスへの国家投資や東京エレクトロンの受注動向が半導体回帰のシナリオを補強してきた。実需があるから株が上がってる、という論理は一応成立している。

弱気派が刺している場所

PER が高いのはずっとそうだったけど、金利が下がりきらない環境でのバリュエーション維持は構造的に厳しい。加えて、個人マネーの流入が目立ちすぎている。機関が主導していた上昇に、遅れて入ってきた個人が「押し目を拾う」と言いながら追いかけているパターン——これ、過去の局面でも何度も見た光景だ。

ドットコムバブルと同じか、という話を真面目にしてみる

比較自体は悪くない。ただ、「ドットコムの再来」という言葉が一人歩きし始めると思考が止まる。

2000年前後のバブルが崩壊した最大の理由のひとつは、収益モデルが存在しなかった企業が大量に上場していたことだ。「インターネット」というキーワードがついただけで株価が10倍になった会社が、実際には一円も稼いでいないケースが珍しくなかった。エヌビディアは違う。売れている。利益が出ている。今期の数字は実物だ。ここは区別しなければいけない。

一方で、AI関連の「周辺銘柄」に目を向けると話が変わってくる。AIと名のつく国内中小型株の一部では、業績以上に短期資金が先行しているように見える銘柄もある。この構造——コアは実需、周辺はバズ——というのは、2000年前後とかなり重なって見える。崩壊するとすれば、中心から壊れるんじゃなくて、周辺から剥がれていく展開かもしれない。

個人投資家界隈で「空気が変わった」と感じる具体的な理由

数字だけじゃなくて、テキストで読めるものがある。X(旧Twitter)の投資クラスタの発言の変化がわりと正直で、2023年末くらいまでは「AI株どれ持ってる?」という話題の温度が高かった。それが今は「どこまで持ち続けるか」という話に移りつつある。「どこで売るか」を探している人間の割合が増えている。

YouTube の投資系チャンネルも、2024年以降は「利益確定のタイミング」を扱うコンテンツが増えた気がする。見ていると、上昇を前提にしていた語り口が、少しずつ「出口を考える時期」に切り替わっている。これは雰囲気の話ではあるんだけれど、長く相場を見てきた感覚では、この「語り口の変化」が実際の転換より少し早く出る。

▍ なおの視点

正直に言えば、私はまだポジションを維持している。エヌビディアそのものではなく、関連の国内半導体と電子部品の一部に。でも、増やす気にはなれていない。理由はバリュエーションへの不安というより、「みんなが同じ方向を見ている」という不気味さのほうが大きい。相場で一番怖いのは、全員が正しいと思っているときだ。

「実需がある」と「株価が正当化される」は別の話だ、というのが長く相場を見てきた体感で、その区別を忘れたとき、過去に何度か痛い目にあった。今がそのタイミングかどうかは分からない。分からないから、少なくとも一方向に全乗りはしていない。

金利と「もし動いたら」という話

弱気派の論拠に「金利高止まり」がある。これは確かに効いている。ただ、FRBは2024年9月以降、3会合連続で計1%の利下げを実施した。この事実は重要で、それでも相場の方向感が一本に絞れていないのは、利下げの「速度」と「着地点」への不確実性がまだ大きいからだと思っている。

つまり、崩壊シナリオとバブル継続シナリオが、どちらも「金利の行方次第」という同じ変数に依存しているという構造がある。これが今の相場の気持ち悪さの正体のひとつだと思う。どちらに振れてもおかしくない材料が並んでいて、かつその材料が同じものだという。

個人投資家として意識したいこと

  • 「実需がある」と「株価が正当化される」は別命題として切り離す
  • AI関連株の「コア(実力銘柄)」と「周辺(便乗銘柄)」を自分なりに仕分ける
  • 金利動向への感度を今まで以上に持つ(特にFOMCの文脈変化)
  • X・YouTube の「語り口の変化」を定性指標として読む習慣を持つ
  • ポジションサイズを「信念ではなく不確実性」に合わせてコントロールする

「バブルかどうか」より、誰が損をするか

議論の構図を変えると少し見えやすくなる。「バブルかどうか」という問いは、実はあまり答えが出ない。バブルは崩壊したあとにしか正式に認定されないし、その定義もわりと曖昧だ。

もっと実用的な問いは「誰が最後に買わされるか」だと思っている。機関投資家が先に入り、その後に個人が追いかける構造はAI株でもすでに起きている。機関が出口を探すフェーズに入ったとき、個人は「まだ上がる」という言説の中で高値を掴みやすい——機関と個人の情報格差が、こういう場面で最も顕在化する。

だから私は強気派でも弱気派でもなく、「出口がどこにあるかを考える側」にいたい。バブルかどうかより、自分が誰の役を演じているかの方が、よほど切実な問いだと感じている。

※本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではなく、市場構造や投資家心理についての個人的な考察を目的としています。投資判断は自己責任でお願いします。

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