AppBank(6177)決算|今期予想は出せないのに「来期12期ぶり黒字」は見えている理由

投資・マーケット

夜中の2時をすぎたあたりで、AppBank(6177)が出してきた39ページの資料をようやく読み終えた。表紙には「27/12期、12期ぶりの通期黒字化へ」「再復活への道しるべ」。この会社のIRで「復活」という言葉を見るのは初めてじゃない気がして、そう感じてしまう時点で、こっちもだいぶこの銘柄に疲れているんだと思う。

それでも今回の資料は、過去のものとちょっと毛色が違った。夢の話だけで終わらせず、四半期ごとのEBITDA、切り離した赤字事業の名前、削った役員報酬の比率まで、わりと生々しく並べてきている。読みながら「お、今回は本気かもしれない」と思いかけたところで、注記の小さな文字に引っかかった。今期(2026年12月期)の業績予想は「合理的な算定が困難」なので出さない、と書いてある。そのすぐ後ろで、来期(2027年12月期)の黒字転換については「見通しがたった」と言うのだ。

今期の着地は見えないのに、その先の黒字は見えている。矛盾とまでは言い切れないけれど、読む側としては一番ざらつくところで、なので今回は8月に出た上期決算の数字とこの10月の資料を横に並べて、「その黒字化の根拠、本当に揃ってるのか」を自分なりに検算してみた。

この記事の前提
2026年8月13日発表の中間決算短信・8月14日提出の半期報告書と、2026年10月14日付の経営戦略資料(39ページ)をもとに書いています(最新情報要確認)。下の「総合判定」は8月の上期決算に対するもので、10月の資料は決算発表ではなく、その後に出た経営戦略の説明資料です。会社資料のグラフから拾った数字は概数で、端数処理により決算短信と差が出る場合があります。特定銘柄の売買を勧めるものではありません。

▼ 先に4点だけ置いておく

① 総合判定:悪決算(8月の上期決算に対して。四半期単位では底の気配あり)

② 理由:売上+16.4%の中身はほぼ子会社の連結効果/営業赤字・最終赤字ともに拡大/通期予想がなく進捗率が測れない

③ 見通し:言葉は「強気」、数字は「非開示」

④ 注目:+EBITDAの赤字幅が四半期で縮小中/-既存のメディア事業が前年同期比で約24%減収

① 総合判定は「悪決算」。ただ、底の匂いはほんの少しする

まず上期(1〜6月)の累計から。表にするとこうなる。

上期累計(百万円)2025年2026年前年同期比
売上高658766+16.4%
営業損益▲81▲116赤字拡大
経常損益▲82▲116赤字拡大
最終損益▲82▲226約2.8倍

※2025年は非連結、2026年は連結。厳密には同じ物差しではない点に注意。出典:決算短信・株探

売上は伸びた。でも赤字はどの段階でも広がっていて、最終損益にいたっては前年の3倍近い。これを「好決算」と呼ぶのはさすがに無理がある。

迷ったのは、4〜6月の3カ月だけを切り出したときの数字だ。売上は前年の271百万円から382百万円へ41%増えて、売上に対する営業赤字の比率(営業損益率)は▲14.4%から▲11.8%へ縮んでいる。会社が重視しているEBITDAも、1〜3月の▲57百万円から4〜6月は▲30百万円へ、ほぼ半分になった。この流れだけ見れば「普通」に置いてもいいかもしれない、と一瞬思ったんだけど、半年トータルで赤字が膨らんでいる事実を、四半期の改善で上書きするのはやっぱり気持ちが悪い。なので判定は悪決算。ただし、底を探っている途中の悪決算、という但し書きつきで。

用語ミニ解説
前年同期比:去年の同じ時期と比べてどれだけ増えたか減ったか。季節の影響を消して比べられる。
営業損益:本業で稼いだお金から、本業にかかった費用を引いたもの。マイナスなら本業が赤字。
EBITDA(イービットディーエー):営業損益に、減価償却費やのれん償却費などを足し戻した収益の指標。償却の重さを除いて本業の回り具合を見るためのもので、実際の現金の出入り(運転資金や設備投資、税金)を示すものではない。赤字企業が好んで使う指標でもある。
のれん:会社を買ったとき、相手の純資産より多く払った「上乗せ分」。毎年少しずつ費用にしていく。
連結:子会社の売上や利益を親会社と合算して決算を作ること。
進捗率:会社が出した通期予想に対して、今どこまで来ているかの割合。

② 判定の理由。引っかかったのはこの3つ

ポイント1:売上+16.4%の正体は「買ってきた会社の売上」

増収、と言われて素直に喜べないのはここだ。2025年9月に株式交換でmusica lab(IPグッズの企画・製造)とPWAN(システム開発)を100%子会社にして、10月から損益の連結を始めている。去年の上期にはこの2社の数字が入っていないので、増えて当然といえば当然なのだ。

資料11ページのグラフから事業別の売上を拾ってみると、構図がはっきりする。IP&コマース事業は前年上期の50百万円強から279百万円へ大きく伸びた一方で、もともとの柱だったメディア事業は605百万円から462百万円へ、約24%減っている(グラフ読み取り、要出典確認)。子会社2社の単体売上が年4億円と3億円強の規模だったことを考えると、連結の効果を剥がした既存部分は、むしろ縮んでいる可能性が高い。推測ですが、これが今回の決算で一番見落とされやすいところだと思う。

ポイント2:赤字は全段階で拡大、最終は約2.8倍

営業赤字は▲81百万円から▲116百万円へ。4〜6月の最終赤字が▲152百万円と、営業赤字(▲45百万円)の3倍以上に膨らんだのは、のれんの減損損失105,674千円、ざっと1億円強を計上したからだ。半期報告書によると対象はmusica labのIP&コマース事業に係るのれんで、理由は「将来事業計画からの乖離」により、当初想定していた超過収益力が見込めなくなったため、と会社自身が説明している。資料10ページでは「今後の償却費を縮小」と前向きな言葉で並んでいるけれど、黒字化を目指す一方で、買収時に描いた収益計画は1年経たずに一度崩れていた、ということになる。

バランスシートも削れていて、総資産は2025年12月末の1,226百万円から6月末には874百万円へ、自己資本は897百万円から687百万円へ減った。もっと生々しいのは現預金で、735百万円から493百万円へ、半年で約2.4億円減っている。自己資本比率が78.6%と高く見えるのは、借金が少ないというより、資産のほうが縮んだ結果でもある。単純に今のペースが続けば手元資金は1年ほどで底をつく計算で、もちろん会社はそうならないように動くわけだけど、その「動き方」が何なのかは後で触れる株主構成の話につながっている。

見落としたくない開示:継続企業の前提に関する「重要事象等」
8月の半期報告書には、AppBankが10期連続で営業損失を計上し、当中間期も116,600千円の営業損失を出したことから、「継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在」するという記載がある。
ただし会社は、資金調達の状況などを踏まえて「継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められない」と判断していて、決算短信の注記事項にも継続企業の前提に関する注記(いわゆるGC注記)はない。
初心者向けに言い換えると、「会社が続くかどうかを疑われても仕方がない状況にあることは認めるが、資金のめどはあるので、今すぐ危ないとまでは判断していない」という意味。GC注記がつく段階よりは一段手前で、ここが外れるか、深まるかは今後の決算で必ず確認したい。

この開示と、10月の「12期ぶり黒字化へ」という資料を並べると、構図がよく見える。会社が続くことへの懸念を自ら書いた2カ月後に、来期の黒字化を宣言した。宣言そのものを否定する気はないけれど、どちらも同じ会社の公式な開示だということは、頭の片隅に置いておきたい。

ポイント3:通期予想がない。だから進捗率が測れない

AppBankは2026年12月期の業績予想を出していない。進捗率で「順調かどうか」を判断する、という決算の基本的な読み方がそもそも使えないわけだ。仕方がないので前期(2025年12月期)の通期実績を物差しにしてみると、売上は1,242百万円に対して上期で766百万円、約62%。営業赤字は通期▲170百万円に対して、上期だけで▲116百万円、つまり去年1年分の赤字の約68%をもう使い切っている。悪いほうの「進捗」が早い、というのはなかなか笑えない構図だ。

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③ 今後の見通し:言葉は「強気」、数字は「黙秘」

会社の予想そのものが出ていない以上、数字で強気か弱気かを判定することはできない。ただ、資料に並んだ言葉はかなり強い。2027年12月期に12期ぶりの営業黒字、その先の中期目標は2030年12月期までの5年間で売上の年平均成長率(CAGR)+40%、営業利益率10%以上、時価総額100億円超の定着。

これを実際の数字に直すと、なかなかの山になる。2025年12月期の売上12.42億円を起点に年40%ずつ5年伸ばすと、2030年には約66.8億円。営業利益率10%なら営業利益は約6.7億円で、今の年▲1.7億円から見ると8億円以上の振れ幅だ(筆者試算)。時価総額のほうは、10月14日の終値81円と6月末の発行済株式数約2,524万株で計算すると約20億円(最新情報要確認)。ただ、時価総額は株数が増えても膨らむので、「株価が5倍になる」という意味ではない点は気をつけたい。新株予約権の行使で株数が増え続ければ、株価がそれほど上がらなくても100億円には近づく。目標の数字が、既存株主の儲けと同じ方向を向いているとは限らないのだ。判定としては「強気」。それも、数字の裏付けを出さないまま語られている強気だ。

一方で、来期の黒字化の根拠として挙げられている中身は、意外と地味で、ある意味誠実でもある。資料が挙げているのは3つ。

会社が挙げる「下期以降の改善ドライバー」
1. ここ2四半期の減収要因だった、サッカーのシーズン移行の影響が反転する
2. 2025年12月期以降の減収要因だった、一部顧客のインシデント影響が改善する
3. のれんの一部減損で、今後の償却費が縮む
(資料11ページより要約)

1と2は「新しく稼ぐ」話じゃなくて「マイナスが消える」話で、3は会計上の処理だから、稼ぐ力そのものが増えたわけではない。資料は「新規事業の成功を前提とせずに黒字転換が射程圏」と書いていて、それ自体は保守的で好感が持てる。逆に言えば、AIだのIP CROSSだのが不発でも黒字になる、と言っているのに近い。だったら今期の予想くらい出せるんじゃないか、という気持ちはどうしても残る。

「年7〜23億円」は誰の売上か

資料の目玉は、提携先2WINSの技術を使ったAI-OCR「SCR」の売上ポテンシャルだ。SaaS型は対象約9,700社×導入率3〜10%×年間単価240万円で年7〜23億円、カスタム型は大型工場約1,900×導入率1〜5%×1件4,000万円で初期8〜38億円、それに保守が年1〜7億円。

掛け算自体は合っている。問題は、これがAppBankの売上予想ではないことで、資料にも小さく「うち一定割合を当社の収益に」と書かれている。技術は2WINSのもので、AppBankが担うのは販路づくりと営業設計。その「一定割合」が何%なのかは書かれていない。さらに導入率3〜10%はあくまで会社の想定で、SaaS型の現在地は「拡販中」、カスタム型は「PoC(試験導入)を継続中」の段階だ。今期の上期売上が7.66億円の会社が「年7〜23億円」と書くと、つい自社の売上が倍になる絵を思い浮かべてしまう。そこが一番危ない読み違いだと思う。

④ 注目ポイント

一番のポジティブ:EBITDAの赤字幅が、実際に縮んでいる

ここは素直に評価したい。資料に載っている四半期ごとのEBITDAを並べるとこうなる。

(百万円)25/1Q2Q3Q4Q26/1Q2Q3Q
売上高388270218353385381―
営業損益▲43▲39▲45▲45▲72▲45―
EBITDA▲42▲39▲45▲30▲57▲30黒字見込み

※会社資料11ページのグラフから読み取った概数。端数処理により決算短信と差が生じる場合がある(例:短信の上期営業損失は116,600千円)

ここで一つだけ強調しておきたいのは、EBITDAが黒字になっても営業利益が黒字になるわけではない、ということだ。表を見ると、2026年2Qのような四半期でもEBITDAと営業損益の間には15百万円ほどの差があって、これが減価償却やのれん償却の分になる。会社が「3QにEBITDA黒字」と言っているのは、この償却を引く前の段階でようやくプラスに届く、という意味で、来期に約束している「営業黒字」はさらにその上の段にある。減損で償却が軽くなるぶん差は縮むはずだけど、二つは別のゴールだと覚えておいてほしい。

年間で見ても、EBITDAは2023年12月期の▲353百万円、2024年の▲233百万円、2025年の▲155百万円と、白石体制になってから毎年赤字幅を詰めてきている。コスト面の手当ても具体的で、実店舗のYURINAN事業を譲渡して年▲103百万円の営業損失を消し、原宿の店舗を閉めて地代家賃を四半期10百万円から4百万円に圧縮、役員報酬は2023年12月期比で48%減。マックスむらいさんの動画事業も手放して、資料には「脱マックスむらいが名実ともに完結」とまで書いてある。昔からこの会社を知っている身としては、ちょっとしんみりする一行だった。

一番のネガティブ:本業のメディア事業が前年同期比で約24%減っている

ポイント1でも触れたけれど、ここはもう一度強調したい。会社自身が「収益基盤」と位置づけているメディア事業が、前年上期の605百万円から462百万円へ約24%減っている(要出典確認)。資料はこれを「一部顧客のインシデント影響」と説明していて、改善すれば戻る、というストーリーになっている。

その「インシデント」が何で、どの顧客の話なのかは開示されていない。ここで一つ、資料を読み比べていて気になったことがある。資本業務提携先のPLANAと、子会社になったPWANの本社所在地はまったく同じ住所(福岡市博多区博多駅前四丁目17番15号)で、PLANAの代表はAppBankの社外取締役(監査等委員)も兼ねている。外部の企業情報では、AppBankの主要取引先としてプラナコーポレーションの名前も挙がっている。

念のため書いておくと、今回の減収の原因となった顧客とPLANAが関係しているかどうかは確認できていないし、半期報告書にも売上高の10%以上を占める顧客の記載はない。地方放送局のネットワークを持つ相手と深く組むこと自体は、むしろ理にかなっている。ただ、同じ住所に拠点を置く企業グループとの関係が、どこまで収益の構造に影響しているのか。セグメント別の取引先への依存度は、今後の開示で確かめたいポイントとして残しておきたい。

今、何にお金を使っているのか

工場を建てる会社でも、研究所を抱える会社でもないので、資料を見る限り大きな設備投資や自前の研究開発の話はほとんど出てこない。資料の言葉を借りると「アセットライト」で、お金と株を使っている先はだいたい次の4つに分けられる。

AppBankの「投資」の中身(資料から整理)
・株式交換によるM&A:musica lab、PWANを現金ではなく自社株で取得
・外部の技術との提携:2WINSとAI開発の基本契約、ジャスミーとAI基盤でMOU
・自前のプラットフォーム開発:IPと企業をつなぐ「IP CROSS」(9月24日リリース)、IP BANK(開発中)
・人:旧富士ゼロックス出身の会長、ZAIKOのCSOを兼ねる副社長など、事業ごとの責任者を外から招聘

この使い方が将来の稼ぎやすさにどう効くかというと、両刃だなというのが正直な感想だ。工場も研究所も持たないぶん、当たったときの利益率は高くなりやすいし、外れても撤退が軽い。中期目標の営業利益率10%も、このモデルなら絵空事とまでは言えない。ただ、主力のSCRの技術は2WINSのもので、IPグッズの製造は280の協力工場、チケットはZAIKO、販路はPLANAと、稼ぐ仕組みの多くがパートナー持ちだ。自社に残る「取り分」は交渉次第で薄くなりうるし、相手が離れれば手札ごと消える。株式交換で会社を買うやり方も、手元の現金は減らない代わりに株数が増えて、既存株主の取り分は薄まる。お金を使っていない、というのは裏返すと、自分の資産として積み上がっているものも少ない、ということでもある。

ちょっと冷たい話:IR件数15件は「売上」ではない

資料6ページで会社は、7〜9月の3カ月でIR発信できる事業案件が15件、月5件ペースに達したと胸を張っている。2025年は月0.5件だったから10倍だ。中身を見ると、MOU、協業、POP UPイベント、EC運営の継承と、大半は金額の書かれていない案件で、いくら売上になるのかは分からない。

ここで思い出してほしいのが株の動き方で、9月3日には出来高が普段の20倍近い455万株まで膨らみ、高値101円をつけたあと終値は89円、翌日には85円に戻っている。何が材料視されたのか、私は特定できていない。ただ、ニュースが増えれば出来高が立ち、出来高が立つ日は、株を売りたい側にとって一番売りやすい日になる。

資金の流れも見ておきたい。この会社の赤字を支えてきたのは、新株予約権による資金調達だ。新株予約権は、決められた価格で新しい株を受け取れる権利で、行使されれば会社にお金が入り、その代わり株数が増える。半期報告書によると、第13回新株予約権では行使がすべて終わって約7.38億円を調達。2025年6月には、マイルストーン・キャピタル・マネジメントがこの第13回の新株予約権2万個(200万株分)と株式109万8,000株を取得し、議決権ベースで14.68%を握っている。続く第15回(2025年11月発行、クオンタムリープが引き受け・要出典確認)は、6月末までに約2.03億円を調達済みで、未行使分がすべて行使されれば約9.27億円が入る計算になっている。2026年4月には行使価額120円の第16回も決議された。

さっきの継続企業の前提の話で、会社が「重要な不確実性はない」と判断した根拠の一つが、まさにこの資金調達の状況だ。会社が悪いと言いたいわけじゃない。赤字の会社が生き延びるには必要な仕組みでもある。ただ、行使が進む局面では市場に新しい株が出てくるし、ニュースで出来高が膨らむ日はその売りが吸収されやすい日でもある。この仕組みを知らずにIRの見出しだけで飛びつくと、だいたい誰かの出口を支える側に回ることになる。2025年8月25日につけた高値522円から、10月14日の81円までの道のりが、それを静かに物語っている気がする(株価は最新情報要確認)。

なおの独自考察:答え合わせは11月の3Q決算

今回の資料でいちばん大事な一文は、たぶん「26/12期3Qは単四半期でEBITDA黒字となる見込み」だと思う。来期の黒字化も、中期目標も、全部この一点の上に乗っている。そしてこれは、あと1カ月ほどで答えが出る。2025年の3Q決算は11月13日だったので、推測ですが今年も11月中旬になるはずだ。

しかも去年の3Qは、売上218百万円と1年で一番弱い四半期だった。比較のハードルが低いぶん、前年同期比の見栄えは良くなりやすい。逆に言えば、ここで黒字にならなかったら言い訳のしようがない。会社もそれを分かったうえで、決算の1カ月前にこの資料を出してきたんだろうな、と思うと、覚悟とも、先回りの演出とも読めて、正直どっちなのかはまだ判断がつかない。

シナリオ3Q決算で起きることその後に考えられる展開
強気EBITDAが黒字、営業損益もトントン近くまで改善。SCRの有償導入社数が初めて開示される物語が数字に変わり始める。来期予想の開示まで行けば、評価の前提が変わる
基本EBITDAは小幅黒字、営業赤字は継続。導入社数などのKPIは非開示のまま「見込み通り」で一旦は安心されるが、決め手に欠け、材料が出るたびに上下する展開(推測)
弱気EBITDA黒字が未達。メディア事業の回復も見えないわざわざ事前に宣言した「見込み」が外れる。現預金の減少と継続企業の前提の記載が改めて意識され、新株予約権の行使による株数の増加も重くのしかかりやすい

私自身は、今の時点で飛び乗る理由はまだ見つけられていない。赤字幅の縮小は本物だと思うし、コスト削減の中身も具体的で、以前の「言葉だけのIR」からは確実に変わった。それでも、通期予想を出さずに来期の黒字だけを語る姿勢と、IRの本数を成果として数える感覚には、どこか不気味さが残る。3Qの短信で数字を確かめてからでも、たぶん遅くはない。ここまで来たら、そのくらいは待っていい銘柄だと思う。

3Q決算で見るべき6つのチェック項目
□ 7〜9月単体のEBITDA(営業損益+減価償却費+のれん償却費)はプラスか
□ メディア事業の売上は、前年3Q(213百万円)を上回ったか
□ 現預金(6月末4.93億円)と純資産の減るペースは落ち着いたか
□ 継続企業の前提に関する「重要事象等」の記載は外れたか、それとも深まったか
□ SCR(SaaS型)の有償導入社数や、IP CROSSの登録IP数は開示されたか
□ 新株予約権の行使が進み、発行済株式数が増えていないか

出典

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