上げで喜んでいる場合じゃない。インフレと税負担で、あなたの資産は確実に目減りしている

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「春闘5%賃上げ」に浮かれている人へ

2026年の春闘、3年連続で5%台の賃上げ率が見えてきた。

テレビは「33年ぶりの賃上げ水準」と報じ、政府は「賃上げと経済の好循環」と繰り返す。SNSでは「やっと給料上がった」という声が溢れている。

だが、30年以上この市場で生きてきた人間として、はっきり言わせてほしい。

あなたの「手取り」は、ほぼ増えていない。

名目賃金は確かに上がっている。しかし、物価上昇・社会保険料増・税負担を全部差し引いた「実質可処分所得」で見ると、この25年間ほとんど横ばいだ。年率わずか0.4%増。月に換算すれば数千円でしかない。

この記事では、政府とメディアが「絶対にセットで語らない3つの数字」を並べる。読み終わったとき、「賃上げ=豊かになった」という思い込みは消えているはずだ。

実質賃金「4年連続マイナス」──数字が示す残酷な現実

まず、最も基本的なファクトから確認しよう。

📊 2025年・毎月勤労統計の要点

・名目賃金(現金給与総額):前年比 +2.3%(35万5,919円)
・消費者物価上昇率:前年比 +3.7%
・実質賃金:前年比 ▲1.3%(4年連続マイナス)

出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」2025年分結果確報(2026年2月発表)── 要出典確認

2025年は名目で+2.3%賃金が増えた。バブル期の1992年以来、33年ぶりに2年連続で2%超えを記録した。春闘の賃上げ率が2年連続5%を超えた勢いを反映している。

だが、物価はそれ以上に上がった。コメ価格の高騰、食料品全般の値上げ、エネルギーコストの上振れ──結果として、2025年は12ヶ月間、一度も実質賃金がプラスになった月がなかった。

ここで重要なのは「4年連続」という事実だ。2022年のウクライナ侵攻をきっかけに始まった物価高は、輸入インフレから国内の幅広いコスト上昇へと構造的に変質している。一時的なショックではない。

⚠ 個人投資家への直撃

実質賃金が4年連続でマイナスということは、投資に回せる余剰資金が4年間連続で減り続けているということだ。新NISAで積立額を増やした人ほど、生活費を圧迫している可能性がある。「投資で資産形成」の前提が静かに崩れている。

賃上げの果実を食い尽くす「社会保険料」という見えない増税

実質賃金の話だけでは、まだ本質の半分しか見えていない。

もうひとつ、政府が「賃上げ成功」と言うときに絶対にセットで語らない数字がある。社会保険料の負担率だ。

📊 税・社会保険料負担の25年推移

・勤め先収入に占める負担率:19.0% → 24.7%(2000年→2024年)
・社会保険料だけの負担額:年間 約58万円 → 約83万円(+25万円)
・可処分所得の増加:25年間でわずか 年率+0.4%
・国民負担率(2025年度見通し):46.2%

出典:総務省「家計調査」二人以上勤労者世帯、財務省発表値 ── 要出典確認

つまりこういうことだ。

給料が上がる → 社会保険料も連動して上がる → 所得税の累進課税でも持っていかれる → 手取りはほぼ変わらない。

これを第一生命経済研究所の熊野英生氏は「名目所得は増えていても、税・社会保険料負担が同じペースで増えるから、可処分所得がほとんど増えていない」と分析している。そしてこの負担率は、遡及可能な範囲で過去最高水準にある。

⚡ 2026年4月、さらに負担が増える

2026年4月から「子ども・子育て支援金」が医療保険料に上乗せされて徴収開始。初年度6,000億円、2028年度には年間1兆円規模になる。名前は「支援金」だが、実態は社会保険料への上乗せ=事実上の増税だ。これを「増税ではない」と言い切る政府の姿勢を、あなたはどう思うだろうか。

── 最新情報要確認

個人投資家の「実質リターン」はインフレに勝っているか?

ここからが、この記事の本題だ。

「給料は増えない。でも投資で増やせばいい」──新NISAの普及とともに、こういう空気が広がっている。政府も「貯蓄から投資へ」と旗を振っている。

だが、少し冷静に考えてほしい。

🧮 インフレ込みで考える投資リターン

仮にオルカン(全世界株式)の年間リターンが名目+7%だったとしよう。

・インフレ率 3.5%を差し引く → 実質リターン +3.5%
・ここから運用益に対する課税(約20%)を考慮
・さらに投資元本を捻出するために削った生活費のストレスコスト

「名目7%」と「手元に残る実質」の間には、思った以上の乖離がある。

さらに厄介なのは、インフレ下では「何もしなくても資産が減る」ことだ。

銀行預金の金利が仮に0.3%だとして、物価が3.5%上がれば、実質的に毎年3.2%ずつ資産が溶けていく。1,000万円の預金は10年後、実質的に730万円程度の購買力しか持たない。

つまり個人投資家は、二重の圧力にさらされている。

① 可処分所得が増えないから、投資に回す余力が増えない
② インフレで、投資しなければ資産は実質的に目減りする

「投資しないとジリ貧。でも投資する余力が削られている」──これが2026年の個人投資家が置かれている構造的な矛盾だ。

なおの独自考察──30年やってきた人間が今、何を考えているか

正直に言う。この構造を見て、私は怖いと思っている。

30年以上投資をやってきて、バブル崩壊もリーマンショックもコロナショックも全部喰らってきた。だが、今起きていることは、それらとは質が違う。

「緩やかに、静かに、全員の購買力が削られていく」──これが最も対処しにくいタイプの危機だ。

暴落は目に見える。だから逃げられる。だが、年3%のインフレと年1%の負担増が同時進行する世界では、気づいたときにはもう手遅れになっている。

💡 なおが今やっていること(2026年4月時点)

① 「名目リターン」ではなく「実質可処分所得ベース」で家計を管理する
投資リターンだけ見て喜ぶのをやめた。毎月の手取り増減、物価変動、保険料改定を全部追跡している。

② インフレヘッジ資産の比率を意識的に上げている
現金比率が高すぎると3%ずつ溶ける。かといってフルインベストは暴落リスクがある。インフレ局面では「現金の持ちすぎ」も立派なリスクだと考えている。

③ 「賃上げされたから豊かになった」という政府のナラティブを信じない
これは投資判断にも直結する。「消費が回復する」前提でリテール株を買うのは危険だと思っている。可処分所得が増えていない以上、消費回復シナリオは疑ってかかるべきだ。

政府が「賃上げ成功」と言うたびに、あなたが確認すべき3つの数字

最後に、この記事で出した数字を3つだけ覚えておいてほしい。

❶ 実質賃金:4年連続マイナス(2022〜2025年)
名目の賃上げ率ではなく、物価を引いた「実質」で見る。これが基本中の基本。

❷ 税・社会保険料の負担率:19% → 24.7%(25年間で+5.7pt)
給料の4分の1が天引きされている。しかもこの比率は過去最高水準。

❸ 可処分所得の伸び:年率+0.4%(25年間)
名目収入が増えても、手取りはほぼ横ばい。「投資の原資」は増えていない。

この3つを知ったうえで「賃上げ万歳」と言えるなら、それは立派な判断だ。だが、知らないまま喜んでいるなら──それはただ、構造の中で飼い慣らされているだけだ。

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