デッドキャットバウンスとは|本物の底と見分ける3つの条件

投資・マーケット

急落のあとに、なぜか株価がふわっと戻る瞬間がある。あの「戻り」を信じて飛び乗った経験、たぶん多くの人にあると思う。私もある。何度もある。
その現象には名前がついていて、デッドキャットバウンス(dead cat bounce)と呼ばれる。日本語で言えば「死に体の猫の跳ね返り」。なかなか趣味の悪いネーミングだが、相場の本質を恐ろしく的確に言い当てている。

この記事でわかること
・デッドキャットバウンスの定義と由来
・本物の底打ちとの見分け方(出来高・移動平均・セクター連動)
・過去の代表的な事例(リーマン・コロナ・メタ)
・なぜ個人投資家が”猫の跳ね”で繰り返し負けるのか、その構造
デッドキャットバウンスとは|400字で畳む定義

デッドキャットバウンスとは、急落した株価が一時的に反発したあと、再び下落基調に戻っていく現象のことだ。語源は「死んだ猫でも、十分に高いところから落とせば一度は跳ねる」という、相場業界のいささかブラックな比喩。トレンドが下向きである限り、途中の反発は本質的な反転ではなく、ただの慣性による跳ね返りに過ぎない、という発想に基づく。

期間に厳密な定義はないが、数日から数週間の戻りで、その後の安値を更新するパターンを指すことが多い。テクニカル分析の世界では「だまし上げ」「リバウンドの罠」とも呼ばれ、要するに買い手にとっては最悪の形をした希望、ということになる。

問題は、リアルタイムでこれを判別するのが極めて難しいという点に尽きる。本物の底打ちと、ただの猫の跳ねは、初動の数日間ほとんど同じ顔をしている。だからこの言葉は「事後的に呼ばれる名前」とも言われる。
──ここまでで定義はおしまい。ここから先は、では実戦でどう見分けるのか、という話に入りたい。

本物の反転と”猫の跳ね”を分ける3つの視点

私自身、ずっと個人投資家として相場を見てきた中で、「あ、これは本物だ」と思って買って痛い目に遭ったことは、正直に言って数えきれない。逆に「これはただの戻りだろ」と冷笑していたら、そのまま大底になっていたこともある。完璧に見分けられる人間など、たぶんプロにもいない。
ただ、後から振り返って「あのとき気をつけて見ていれば」と思ったポイントは、いくつかある。それを3つだけ書く。

① 戻り局面の出来高
本物の底打ちは、出来高が急落時と同等かそれ以上を伴って反転することが多い、と言われる。一方、デッドキャットバウンスは出来高がスカスカのまま価格だけが浮く。買い手の本気度が値段だけに表れて、板の厚みに出てこないパターンだ。チャートだけ見て安心しないで、出来高棒をちゃんと見る。これだけで防げる事故はかなりあると思っている。
② 移動平均線との位置関係
25日線・75日線が下向きのまま、価格だけがそこにタッチして折り返すような戻りは、テクニカル的にはまだ下落トレンドの中の反発に過ぎないと読める。逆に、短期線が長期線を上に抜けにいく動き(いわゆるゴールデンクロスの兆し)が出てくると、トレンド転換の可能性が出てくる。──もちろん絶対ではない。ここを過信して買い向かって失敗した話は、私の引き出しにいくつもある。
③ セクター・指数との連動
個別株だけが跳ねて、同セクターも指数も冷えたままなら、それはその銘柄固有の需給イベント(カラ売りの買戻し、機関の在庫整理など)の可能性が高い。本物の相場転換は、たいてい複数銘柄・複数セクターで同時に起きる。一頭だけ元気な猫は、たぶん跳ねているだけだ。

この3つを並べて見て、どれも怪しいなら、その戻りは見送ったほうが期待値は高い、というのが私の経験則。
もちろん「経験則」であって、再現性が保証された手法ではない。相場に絶対はないし、3つ揃った本物の反転を私が見送ってきた回数もたぶんそれなりにある。それでも、「とりあえず跳ねたから買う」よりは、はるかにマシな判断ができるはずだ。

⚠ よくある失敗パターン
急落の翌日、SNSで「底打ちした」「反転確認」という威勢のいい投稿が一気に増える。あれを見て安心して買うと、だいたい刺さる。誰が何の目的でそういう投稿をしているのか、一度立ち止まって考えたほうがいい。
過去の”猫の跳ね”事例|結果的にこう動いた相場

事例を3つだけ並べる。すべて事後的に「あれはデッドキャットバウンスだった」と振り返られている代表的な局面で、私自身もリアルタイムで眺めていて、いくつかは普通に踏みにいって普通に負けた相場でもある。
※下記の数値はおおまかな水準感で、正確な値は各種チャートサービスで要確認。

事例①|2008年 リーマンショック
2008年9月のリーマン破綻後、米国株は急落した。10月後半から11月にかけて一度反発局面があり、市場では「底入れ感」を口にする声も出ていた。
ただ、その戻りはあくまで通過点で、本格的な底打ちはさらに数か月先、2009年3月のことだった。途中の反発で買いに行った投資家の多くが、もう一段の下落を浴びた。後から見れば典型的な「猫の跳ね」が、何度も繰り返されていた相場だった。
事例②|2020年 コロナショック
2020年2月末から3月にかけての急落局面では、途中で何度か反発が入った。「底打ち確認」「自律反発」という解説が当時のSNSに溢れていたのを、よく覚えている。
結果的にこのときは中央銀行の超大型介入で本物の反転に繋がったが、3月の底をつけるまでに何度か小さな”猫の跳ね”があり、途中で買い向かった個人は一度は深く沈んだ。「結果オーライ」になった人と、「途中で投げた」人で、明暗が分かれた相場でもある。
事例③|2022年 メタ・プラットフォームズ(旧Facebook)
2022年、メタ株は高値から大きく下落した。途中で2割前後の戻りが入った局面があり、「割安感」「底打ち」という強気の声も出た。
しかしその後、メタ株はさらに安値を更新していった。最終的に翌年にかけて反転するわけだが、2022年中の途中反発に飛び乗った投資家にとって、その戻りはまさに「跳ねさせられた」局面に見えた、というのが事後的な評価だ。
※具体的な高値・安値・反発幅は要出典確認。

この3つに共通しているのは、いずれも反発局面で「底入れ論」が市場に流れたという点と、その情報を信じて買った個人が結局もう一段の下落を浴びた、という点だ。
事後的に見れば「あれは典型的なデッドキャットバウンスだった」と言える。ただし、リアルタイムでそれを見抜けたかと言えば、正直私も自信はない。これは過去を断罪する話ではなくて、「同じ顔をした罠が繰り返し出てくる」ことだけを覚えておく話だと思っている。

そもそも、なぜ”猫の跳ね”は繰り返し発生するのか

ここからは、テクニカルの話ではなくて、構造の話を少しだけしたい。
急落のあとに反発が入る理由は、ひとつではない。空売りの買い戻し、割安感からの逆張り買い、アルゴリズム取引の自動執行、ETFのリバランス需要、機関の在庫整理など、複数の要因が同時に動いている。「自律反発」という言葉で片づけられがちだが、実際の中身はもう少し複雑だと思う。

そのなかで、個人投資家として気にしておきたい要素のひとつが、機関投資家の在庫整理の側面だ。
機関や大口は、急落の局面でポジションを一気に投げ切れないことが多い。流動性が悪化しているからだ。売り切れていない在庫を抱えたまま、価格だけが先に底をつけることは普通にある。
その状況で、価格がふわっと戻ったらどうなるか。彼らにとって、出来高を伴わない戻りは絶好の「逃げ場」になりうる。

構造的に見ると
デッドキャットバウンスのすべてが「大口の在庫整理」というわけではない。ショートカバー、アルゴ、逆張り買いなど、要因は複数ある。
ただ、「出来高がスカスカで、信用評価損益率が深く沈んだまま、価格だけが浮いている戻り」には、大口の在庫整理の側面が混じっているケースもある、と読める。すべての反発がそうではない。ただ、そういう構造が含まれうるという視点は、持っておいて損はないと思う。

この視点に立つと、「戻ったから買う」「跳ねたから乗る」という発想は、相当に危うい。猫が跳ねているのではなくて、跳ねさせられている可能性を、一度疑ったほうがいい場面が、ある。
正直、ここは不気味な話だ。チャートを眺めているだけだと絶対に見えてこない世界の話で、しかも誰も明示的には説明してくれない。私自身、長くこの相場を見てきて、ようやく「ああ、そういう側面もあったのか」と腑に落ちた話のひとつでもある。

結局、デッドキャットバウンスとどう付き合うか

完璧に見分けることはできない。これは前提として認めるしかない。
そのうえで、出来高・移動平均・セクター連動という3つの視点で「怪しさ」をスクリーニングし、戻りが本物っぽい確信が持てるまで手を出さない、という消極的な構え方が、個人投資家にとってはたぶん最も合理的な対応になる。

機会損失は確かに発生する。本物の底を見送ることもあるだろう。それでも、跳ねた猫の上に乗って一緒に落ちるよりは、はるかにマシだ。
──と書きながら、自分が今この瞬間に同じ判断を冷静にできるかというと、正直自信はない。それくらい、リアルタイムの相場は人間の判断を狂わせる。だから、ルール化して、感情を入れないようにする。それしかない、というのが、長く相場を見てきた中での結論めいたものだ。

この戻りは本物か、それとも跳ねさせられているだけか。
その問いを、ポジションを持つ前に必ず一度自分に向ける。それだけで、たぶん勝率は変わる。確証はない。ただ、変わると思っている。

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なお@HAVE MARCYの視点
デッドキャットバウンスという言葉は知っていても、実際の渦中で判別できる個人投資家はほとんどいない。私もできない日が多い。
ただ、「跳ねている」のか「跳ねさせられている」のかを問う癖だけは、持っていて損はないと思う。問いを持っているだけで、少なくとも一拍は遅れて手を出すようになる。その一拍が、相場では命を分ける。

── まだ読み足りないなら ──

カテゴリから読み解く個人投資家が負ける構造

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