半導体株、二週間で二度目の急落|今度は中国DUVが引き金に

投資・マーケット
前回、TSMC純利益77%増でも半導体株急落、好決算神話が壊れた日という記事で、7月16日の急落を扱った。あの記事の最後に、次に見るべきポイントとして「東京エレクトロンやアドバンテストが反発するかどうか」を挙げておいた。

11日後の今日、答えが出た。反発しなかった。それどころか、また落ちた。

7月28日、キオクシアが再びストップ安近くまで売られた。東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコも軒並み二桁の下げ。日経平均は前日比2,884.73円安の62,046.46円で終わり、一時は4.6%を超える下落幅を記録した場面もあったらしい。前回の下げからまだ2週間も経っていない。
今回引き金になったのは、前回とはまったく別の材料だ。中国政府系企業がDUV露光装置の製造を始めたという報道。半導体そのものの需要の話ではなく、それを作る装置側の競争構造の話。震源が変わっているのに、結果として起きていることは前回とほぼ同じに見える。この「材料は毎回違うのに結果だけ同じ」という感覚が、今回いちばん書きたかったところだ。

今回の下げ、事実だけ並べておく

前回記事で7月16日〜17日の詳細(TSMCの決算内容、SKハイニックスのADR上場、CXMTの上場など)は書いたので、そこは前回記事に譲る。ここでは今回、7月28日に起きたことだけを整理する。
7月28日の値動き(要出典確認箇所は本文末尾のリンクを参照)
・引き金:中国政府系企業によるDUV露光装置の製造開始報道。半導体製造装置の競争激化懸念が強まる
・キオクシアホールディングス:一時18%安、7月17日以来のストップ安水準
・東京エレクトロン、アドバンテスト、ディスコ:いずれも10%超の下落
・日経平均株価:前日比2,884.73円安の62,046.46円、TOPIXも111.77ポイント安の3,954.30
・一時、日経平均は前日比4.6%安まで下げ幅を拡大し、約2カ月ぶりの日中安値をつけた場面もあった
前回の主役だったSKハイニックスのADR絡みの需給要因は、今回はほぼ関係ない。今回は装置メーカー側、それも中国という新しいプレーヤーが材料になっている。震源のバリエーションが増えてきている、というのが率直な感触だ。

「材料が株価を動かしている」のか、「材料が後から貼り付けられている」のか

前回の記事で、「良いニュースが売り材料になる」という逆説について書いた。今回はその逆説がもう一段面白いことになっている。今回の材料である中国のDUV参入自体は、今日いきなり湧いて出た話ではないはずだ。中国メーカーの技術的な追い上げは、CXMTのDRAM絡みも含めて、この一カ月ずっと市場の底流にあった懸念だった。
それが今日、報道というきっかけを得て、一気に売りの理由として前面に出てきた。相場では時々、材料が株価を動かしているのではなく、ポジション調整の理由として材料が後から貼り付けられているだけなんじゃないか、と疑いたくなる瞬間がある。今回がまさにそれなのかは分からない。ただ、二週間で二度、震源の違う材料が同じ結果を連れてくるのを見せられると、個別の材料そのものより、半導体セクター全体に積み上がったポジションの重さのほうを疑いたくなってくる。
好決算という「入口の材料」で個人が買いに動くタイミングと、需給や競争構造の変化という「出口の材料」で機関が動くタイミングは、そもそも評価している時間軸が違う。個人は「今の決算」という点を見て、機関は「この先のポジショニング」という面を見ている。機関投資家から見た個人投資家は、結果的にポジション整理の受け皿になりやすいという話を以前書いたが、今回のケースもその変奏だと思う。悪意があるわけではなく、単に情報の処理速度と、見ている時間軸が違うだけなのだが、結果として個人だけが高値掴みの位置に取り残される構図になりやすい。
前回のチェックポイント、答え合わせ
前回「東京エレクトロンやアドバンテストが反発するかどうか、反発が続かないなら今回の下げは一時的な材料出尽くしでは片付けられない可能性がある」と書いた。
結果は、反発どころか二桁安の再来。少なくとも「一時的な材料出尽くし」という楽観的な解釈は、いったん保留にしたほうがよさそうだ。

これは「終わり」なのか、「蛇口の付け替え」が続いているだけなのか

「半導体相場はもう終わった」という声を、この数日でよく見かける。気持ちはわかる。キオクシアが二度もストップ安近くまで売られる値動きを見せられれば、そう感じても無理はない。ただ、今回の材料も含めて並べる限り、これはAI半導体そのものの需要が消えたという話ではなく、供給側・競争構造側の懸念が次々と可視化されている局面と読むほうが、今のところは構造に近いと思う。
中国製DUVの量産化がどこまで現実的な脅威になるかは、今日の報道だけでは判断できない。装置の内製化には歩留まりや実用化までの時間がかかる。それでも「中国メーカーが装置まで手を伸ばし始めた」という事実そのものは、これまでのAI半導体の独占的なポジションに対する見方を、少しずつ変えていく材料にはなり得る。今日の下げをきっかけに、ここは注視しておきたい。
次に見ておきたいポイント
・中国製DUVの量産化・実用化のペースと歩留まり(脅威が現実化するまでの時間軸)
・キオクシア、東京エレクトロン、アドバンテストが次の決算・IR説明会で出すガイダンスの強弱
・DRAM・NANDの実勢価格が下がり始めているか(需給逼迫が崩れているかの一次情報)
・三度目の急落が起きるかどうか。同じパターンがもう一度繰り返されるなら、それは個別材料の話では片付けられなくなる
なおの独自考察
正直に書くと、前回の記事を書いた時点では、まだ「一過性の調整」という解釈の余地を残していた。ただ11日でもう一度、震源の違う材料で同じ規模の下げが来ると、その解釈はさすがに苦しくなってくる。ずっと相場を見てきて思うのは、こういう「材料は違うのに結果が同じ」パターンが三度目まで続くと、それはもう個別の材料の話じゃなくて、ポジション自体が重すぎる証拠なんじゃないか、ということだ。今回がそこまでの話なのかは、まだ判断がつかない。次にキオクシアかアドバンテストの決算でどんなガイダンスが出るか、そこで少し見え方が変わる気がしている。
好決算のニュースを見て動くこと自体は、間違いではない。ただ、そのニュースに反応しているのが自分だけではないということ、そしてその反応速度が自分より何段も速い参加者がいるということは、頭の片隅に置いておいたほうがいい。次に「過去最高益」という見出しを見たとき、私たちがまず考えるべきは「買うか買わないか」より、「このニュースは誰にとっての入口で、誰にとっての出口なのか」かもしれない。

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