関税ショックで「日本株は割安」と叫び始めたアナリストたちの、3ヶ月前の発言を検索してみた

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3ヶ月前、アナリストたちは日経平均6万円を語っていた。

2026年1月のことだ。専門家106人にアンケートを取ったら、64%が「強気・やや強気」と答えた。高値予想の平均は56,721円。強気な声は「6万円突破」どころか「強い上昇モメンタムが継続すれば6万円も否定できない」とまで言っていた。(要出典確認)

2026年2月には野村證券が年末予想を60,000円に上方修正。三井住友DSアセットマネジメントは61,500円まで引き上げた。(要出典確認)

そして今、同じ人たちが何と言っているか。

「日本株は関税を織り込んだ。割安感が出てきた。買いのチャンスかもしれない」

30年間、こういうセリフを何度聞かされてきただろう。

今回は、その「なぜ彼らはいつも同じことを言うのか」という構造を、冷静に解剖しようと思う。

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3ヶ月で何が変わったのか、タイムラインで見る

まずファクトを確認する。

【2026年1月】
・専門家106人中64%が日本株「強気・やや強気」
・高値予想平均:56,721円
・「6万円突破も否定できない」という声続出
・根拠:高市政権の積極財政、AI相場継続、企業業績の増益見通し(要出典確認)

【2026年2月】
・野村證券、年末日経平均予想を60,000円に上方修正
・三井住友DSアセットマネジメント、61,500円に上方修正
・衆院選で自民大勝→「高市政権基盤安定」「政策実現性が高まった」と追い風(要出典確認)

【2026年3月〜4月】
・中東ショック(イラン情勢悪化)で日経平均急落
・トランプ関税懸念が再燃、相場が不安定化
・同じアナリストたちが「割安感」「押し目買い」を語り始める

3ヶ月で何が変わったか。

株価が下がった。それだけだ。

高市政権の積極財政は消えていない。AI相場のトレンドも終わっていない。企業業績の増益見通しも、まだ消えていない。変わったのは株価だけだ。なのに、なぜ「強気な予想」が「割安」に変わるのか。

「アナリストの予想」が構造的に上振れする理由

ここが本題だ。

アナリストが無能だとは言っていない。彼らの多くは優秀だし、マクロ分析の精度は個人投資家より明らかに高い。問題は「能力の問題」ではなく「インセンティブの問題」だ。

【構造を整理する】

アナリストの給料は誰が払っているか。証券会社だ。
証券会社の収益の柱は何か。売買手数料と金融商品の販売だ。
売買が増えるのはどんなときか。投資家が「買いたい」と思っているときだ。
だとすれば、投資家に「買いたい」と思わせる予想と、「やめておこう」と思わせる予想、どちらが証券会社にとって都合が良いか。

これは陰謀論ではない。経済学が「エージェンシー問題」と呼んでいる、極めて古典的な構造的利益相反だ。

アナリストが意図的に嘘をついているとは言わない。しかし同じ材料を見ても、楽観的に解釈する方向にバイアスがかかりやすい環境に彼らは置かれている。

だからこそ、相場が下がるたびに「割安感」という言葉が出てくる。上がり続けていた株が落ちたとき、「買いのチャンス」と言えば投資家は動く。下がり続けるかもしれないと言っても、誰も得しない。

📖 この構造を深掘りした記事はこちら:
『日本株は買い』と言い続けるアナリストの給料は、誰が払っているか知ってるか?
アナリストという職業の報酬構造と、個人投資家が知るべき「情報の非対称性」を解説。

「TACO理論」という名の合理化装置

2025年のトランプ関税ショックのあと、金融市場である言葉が流行した。

TACO(Trump Always Chickens Out):「トランプはいつもビビって逃げる」

2025年4月2日に相互関税を打ち出したトランプ大統領が、4月9日には90日間停止を発表したことで、「どうせ引く」という楽観論が市場に広がった。

この解釈自体が間違いだとは言わない。実際に2025年は、強硬姿勢を取っては引っ込めることを繰り返した。

しかし問題は、TACO理論が「買い続けることを正当化する便利な物語」として機能し始めたことだ。

「どうせ引く」と思って保有し続けた投資家は、2025年4月の急落で一時日経平均30,792円まで見た。(要出典確認)2026年の今も、同じ構図が繰り返されている。

30年間、こういう「安心させてくれる物語」は何度も登場した。バブル崩壊のとき、「土地は必ず上がる」と言われた。リーマンショックのとき、「サブプライムは一部の問題」と言われた。物語の内容は変わる。でも「安心させてくれる物語が必ず登場する」という構造は変わらない。

なおの独自考察|30年投資家が「割安」という言葉に反応しない理由

なおの結論をシンプルに言う。

「割安」という言葉は、現在の株価が何かと比べて安いという意味だ。
しかし「何と比べて」の部分が、語られないことが多い。

「割安」の基準になっているのは、たいてい「3ヶ月前の株価」か「アナリストの予想PER」だ。しかし3ヶ月前の株価が正しかったとは限らないし、アナリスト予想が今後も成立するとは限らない。

2026年1月に「年末60,000円」と予想していた人は、今でもその予想を維持しているか? トランプ関税の影響を企業業績予想に織り込んだあとでも、その数字は変わっていないか?

私が30年間で学んだのは、「割安かどうか」は結果が出るまでわからないということだ。下がったから割安なのではない。本当の割安は、「なぜその価格が正当化されるか」という根拠を自分で持てているときだけだ。

今の私の行動方針を正直に書く。

①「割安」という言葉を聞いたとき、まず「誰がどこで言っているか」を確認する

②トランプ関税の着地点がまだ見えていない段階で、フルポジションを取ることはしない

③すでに保有している銘柄については、個別の業績へのダメージを自分で試算してから判断する

「アナリストの予想を信じるな」と言いたいわけじゃない。アナリストのレポートは情報として価値がある。ただ、彼らの言葉には構造的なバイアスがあることを知った上で読むのと、知らずに読むのでは、使い方がまったく違う。

3ヶ月前に「6万円」と言っていた人が「割安」と言い始めているのを見て、私は何も感じない。30年間、それが普通だったから。

── 読んで「なるほど」で終わるな ──

「アナリストの言葉には構造的なバイアスがある」
その構造の全体像は、このシリーズで読める。

── まだ読み足りないなら ──

カテゴリから読み解く個人投資家が負ける構造

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