「年利7%の不動産投資を始めた」と70代の親が言い出したら、ベテラン投資家はこう止める

コラム・読み物
70代の親が突然「年利7%の投資を始めた」と言い出したら、あなたはどうするか。
「えっ、危なくない?」と思いつつ、どう説明すればいいか言葉が出てこない——そういう人のために書く。

「みんなで大家さん」が揺れている。2024年6月に東京都・大阪府から行政処分を受けて以降、解約請求が殺到し、最大1年待ちという状態が続いた。投資家は約3万8,000人にのぼり、そのうち4,000人超が解約を申し込んだとも報じられた(要出典確認)。

でも、この話が本当に怖いのは「みんなで大家さん」の個別問題じゃない。こういう商品に「なぜ人は繰り返し引っかかるのか」という、人間の本能に近い部分の話だと私は思っている。そこを少し整理したい。

「年利7%」という数字の何が問題なのか

金融庁が公表している分散投資のデータによれば、国内外の株式・債券に分散した長期投資の利回りは、20年保有でおおよそ年2〜8%の範囲に収まるとされている(要出典確認)。株式市場全体を対象にした長期投資でさえ、そのレンジだ。

そこに「年利7%保証に近い」と見える不動産ファンドが出てくる。おかしいと思わないか。

リスクとリターンの大原則

高いリターンには、必ず高いリスクが伴う。これは投資の世界では「絶対法則」と言っていいくらい普遍的なルールだ。年利7〜8%が「安全な不動産投資から得られる」と説明されるとき、そのリスクがどこに隠れているのかを問わなければならない。元本保証は出資法で禁止されており、「安心安全」という文言に法的根拠はない。

では、なぜ人はこれを疑わないのか。そこに、ある種の「認知のバグ」がある。

なぜ賢い人ほど「仕組みが見えにくい商品」に引っかかるのか

「みんなで大家さん」のような不動産小口化商品が怖いのは、構造が「それなりにまともに見える」ことだ。普通のネズミ講とは違って、実際に土地や建物という「実物資産」がある。それが担保になっているという説明は、一見もっともらしい。

ところが成田プロジェクトに関しては、ある報道によると土地の鑑定評価額が市場価格の最大100倍を超えるとも指摘されており(要出典確認・日経不動産マーケット情報)、しかも2020年から投資家を募集していたにもかかわらず、2025年時点でも開発進捗はほぼゼロに近いという。

「まともに見える」仕組みのチェックポイント

  • その利回りの「原資」はどこから来るか、具体的に説明されているか
  • 建物がない・稼働していない段階で、なぜ分配金が支払えるのか
  • 解約に制限があるか、あるとすれば何ヶ月かかるか
  • 過去に行政処分を受けたことがあるか
  • 担保となる資産の鑑定評価が独立した第三者機関によるものか

そして、もう一つ厄介なのは「過去に配当が来ていた」という事実だ。これが一番きつい。5年間毎月配当が届いていれば、人は「この会社は信頼できる」と思う。過去の実績が将来の保証にはならないとわかっていても、そこに慣れてしまった脳は疑いを手放す。みんなで大家さんの場合も、2013年に行政処分を受けた後も資金を集め続けることができたのは、「処分後に誠実な対応をした」という実績が逆に信頼を高めたからだという指摘がある(要出典確認)。不気味な話だ。正直、これは個人の賢さでは防ぎにくい部分がある。

「後続の資金が入ってくることで成立するモデル」の何が問題か

ここは慎重に書く。私は「みんなで大家さん」がどういう構造かを司法的に断定できる立場にはないし、それをするつもりもない。

ただ一般論として、「現在の収益が十分でない段階でも分配金を支払い続け、新規の資金流入によってそれを維持するモデル」は、規模が大きくなるほど解約が困難になるという特性を持つ。これは構造として自然に生じる問題で、悪意の有無とは別の話だ。投資家が集中して解約を申し込んだとき、資金の出口が詰まる——というのは、こうしたモデルに内在するリスクの一つと考えるのが妥当だろう。

「解約の自由度」は見えにくいリスクの一つ
いつでも解約できる商品と、解約に6〜12ヶ月かかる商品のリスクは根本的に違う。市場の変動に対して自分でコントロールできる余地がどれだけあるかは、「利回り」と同じくらい重要なはずだが、利回りほど大きく宣伝されない。

もし身内が「年利○%の不動産投資」と言い出したら

感情的に反対しても逆効果だ。これはよくある。「そんなの怪しいに決まってる」と言った瞬間に防衛本能が働いて、むしろ聞いてもらえなくなる。

私が有効だと思う伝え方はこうだ。

身内へのアドバイス:感情論を避けた切り口

「解約まで何ヶ月かかるか確認して」と聞く。「6〜12ヶ月」なら、その間お金は動かせないと伝える。

「その利回りの原資はどこか、担当者に説明してもらって」と頼む。まともな商品なら明確に答えられるはずだ。

「退職金・老後資金の全額は入れないで」と伝える。損失が出たとき取り返しがつかない金額を入れるな、という話に落とし込む。

④ 行政処分歴があるかどうか、金融庁や自治体のサイトで確認することを勧める。これは感情でなく事実の確認だ。

結局のところ、高利回りをうたう商品を「完全に見破る」のは難しい。それは私のような個人が長年市場を見てきても、同じだと思っている。ただ、「リスクがどこにあるか問えるか」「解約の自由があるか」「運用の実態が透明か」という視点を持てれば、少なくとも致命的な入れ方は防げる。

「人は何度も同じ罠に引っかかる」という本質

尾上縫のバブル期の話を思い出す。当時、「神のお告げで相場を当てる女将」に大銀行が2兆円以上を貸し込んだ。おかしいと気づいていた人間が社内にいなかったとは思えない。でも、「これまでうまくいっていた」という実績と、「自分だけ疑うのは変なのか」という同調圧力が重なると、プロでも止まれないことがある。

「みんなで大家さん」に3万8,000人が集まったのも、同じ構造だと思う。誰かが損をしているニュースが出るまでは、入ってくる配当が「問題がない証拠」に見えた。バブル期と名前は違う。でも人間の動き方は変わっていない。

なおの独自考察:「高利回り」が出てくる時代背景を読む

低金利が続いた時代に「年利7%」という数字がどれほど魔力を持つか。普通預金が0.001%だった時代に育った人は、7%という数字の”相対的な大きさ”に本能的に反応する。これは合理的な反応に見えて、実は「ゼロ金利との比較」という誤ったベースラインで判断させる設計になっている。

比較すべきはゼロ金利じゃなくて、同リスクで何%のリターンが市場から得られるかだ。株式インデックスが長期で年4〜7%程度を期待できるなら(要出典確認)、それと比べて「本当に優位な商品か」を問う必要がある。流動性を捨てて(解約できない)、追加リスクを取って(開発の不確実性)、それでも株より高いリターンが出るはずの理由は何か。これを問われて明確に答えられない商品なら、私ならまず距離を置く。

まとめ

  • 「みんなで大家さん」の問題は個別事例ではなく、「仕組みが見えにくい高利回り商品」に繰り返し人が引き寄せられる構造の問題
  • 高リターンには必ず相応のリスクが存在する。そのリスクがどこにあるか説明できない商品は疑ってかかるべき
  • 「解約の自由度」は利回りと同じくらい重要な指標だが、見落とされやすい
  • 身内への説得は感情論より「具体的な質問」で行うのが有効
  • 過去の配当実績は将来の保証ではない。「ずっとうまくいっていた」は疑わない理由にならない

参考・出典

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