東京エレクトロンはなぜ急落した?売り手が見えない本当の理由とは

投資・マーケット

東京エレクトロン、7月1日に81,260円の高値をつけてから、正直ここまで早く崩れるとは思っていなかった。7月17日には65,100円まで叩き落とされて、日経平均もこの日だけで2,694円安。掲示板を覗くと「AIバブル崩壊」の一言で片付けようとする書き込みが目立つけど、それだけで説明するのはちょっともったいない気がする。

7/23現在は67,000円台まで戻してきていて、7/30の決算発表を控えて様子見のムードも強い。個人が「怖くなって投げる」のと、機関投資家側が「売る」のとでは、そもそも仕組みが違う。今回はそこを構造から見ていきたい。

「AIバブル崩壊」で終わらせるのがもったいない理由

半導体株が世界的に売られたのは事実だ。フィラデルフィア半導体株指数(SOX)は6月末の高値から20%以上下げて、弱気相場入りしたことになっている。TSMCの決算内容自体は市場予想を上回っていたのに、株価は台北市場で7.3%下落した。決算が良かったのに下がる、というのが今回いちばん不気味なところだと思う。好業績が「織り込み済み」だったから売られる、というやつだ。

日本市場では7月17日、東京エレクトロン・アドバンテスト・ソフトバンクG・キオクシアの4銘柄だけで日経平均を1,800円近く押し下げている。キオクシアに至ってはストップ安まで売られた。個別の業績が急に悪化したというより、指数を構成する値がさ株に売りが集中した、という側面のほうが強いはずだ。

事実として確認できていること
・7/1に高値81,260円 → 7/17終値は65,100円まで下落(7/23時点は67,000円台で推移)
・7/17、日経平均は前日比2,694円安の64,141円
・SOX指数は6月高値から20%超下落し、弱気相場入り
・TSMC決算は市場予想を上回ったが「知ったら終い」の利益確定売りが優勢に
・東エレク・アドバンテスト・SBG・キオクシアの4銘柄で日経平均を約1,800円押し下げ
・決算発表は7/30を予定

株価が下がる理由と、会社の価値が下がる理由は、一致しない。

株価は需給でも動く。会社の価値は業績や競争力で決まる。この二つが短期では必ずしも一致しないからこそ、急落した銘柄を見るときは「何が起きたのか」を切り分ける必要がある。

個人の「損切り」と機関の「売り」は、そもそも仕組みが違う

ここが今回いちばん書きたかったところ。個人投資家がやる損切りって、基本は「怖くなったから成行で投げる」ことが大半だと思う。でも機関投資家側の「売り」は、それとはだいぶ形が違う。同じ「売り」という言葉でくくってしまうと、見えるものも見えなくなる。

個人には見えにくい「売り」の種類
ETFのリバランス売り:構成比率が変わった分を機械的に調整するだけで、TELの業績を見て判断しているわけではない
指数連動ファンドの売買:日経平均やTOPIXに連動させるための調整で、個別銘柄の評価とは無関係に売買が発生する
CTA(トレンドフォロー型ファンド):値動きそのものにルールで反応するタイプで、下げが下げを呼ぶ構造を作りやすい
裁定取引に伴う現物売買:先物と現物の価格差を利用する仕組みで、方向性の予想とは別の理由で売買が動く
海外投資家の日本株全体のポジション調整:TEL単体というより、日本株全体・半導体セクター全体への資金配分を見直した結果として売られることがある
ここは断定できない
株探の投資部門別売買動向を見ると、この時期は海外投資家の売買代金に大きな振れがあり、週によって売り越し・買い越しが入れ替わっていたことは確認できる。ただし、これは市場全体の統計であって「東京エレクトロンを海外投資家が売った」という直接の証拠にはならない。個別銘柄の売買主体までは公表されていないから、あくまで市場全体の資金フローから読み取れる傾向として捉えるしかない。
日経平均への寄与度が大きい半導体株に売りが集中したことと、市場全体で海外投資家の売り越し・買い越しが週単位で大きく振れていたことを重ねると、指数連動ファンドや海外投資家を含む大口資金が影響した可能性は十分考えられる——とは読める。ただ、現時点で売り主体を断定できる資料は見当たらない。要出典確認、という前提で読んでほしい。

「犯人探し」より「構造」を理解したほうが実践的

売り主体を特定できない以上、犯人探しをしても答えは出ない。それより、次に同じような急落が来たときに「今のはどのパターンの売りか」を切り分けられるようになるほうが、たぶんずっと役に立つ。

個人投資家が次にできること
・「誰が売ったか」を犯人探しするより、「なぜこの値動きが起きる構造なのか」を理解するほうが実践的
・7/30の決算発表までは、業績そのものより指数・セクター全体の需給に振らされやすい局面だと割り切る
・板の厚みやPTSの動きを見て、個別の悪材料なのか市場全体の地合いなのかを切り分ける
・逆張りで拾いに行くなら、せめて「指数要因の下げ」なのか「個別業績の下げ」なのかは自分の中で整理してから

東京エレクトロンを売ったのが誰なのか。結局、その答えは分からない。でも、それでいいんだと思う。相場はミステリー小説じゃないし、犯人を当てたところで利益になるわけじゃない。本当に見るべきなのは「どんな仕組みで、この売りが発生したのか」の方だ。ETFなのか、CTAなのか、指数連動なのか、それとも海外投資家のポジション調整なのか。次の急落でも同じ構造が見えたなら、そのとき初めて今回の記事が役に立つ。

なお@HAVE MARCYの独自考察
長年相場を見ていると、こういう「主犯が見えない下げ」のほうがむしろ怖いと思うようになった。個別の悪材料なら、材料が消化されれば終わる。でも指数要因やアルゴ要因が絡んだ下げは、いつ止まるかの目処が立てにくい。正直、67,000円台まで戻してきた今の値動きを見ながら「そろそろ底かもしれない」とフライング気味に仕込みたくなる自分もいる。でもここで急いで拾いに行くのは、たぶん一番やってはいけないことだと分かってはいる。相場では、「何を買うか」より「いつ買わないか」のほうが難しい。今回の急落は、そのことを改めて思い出させる値動きだった。

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出典

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