データセクション新株予約権3021万株の重さとは

投資・マーケット

深夜にチャートを眺めていて、ちょっと手が止まった銘柄がある。データセクション(3905)。1Qの営業利益48億円という数字だけ見ると、AIデータセンター事業がついに立ち上がったように見える。でも決算短信を開いて、売上の内訳を追っていくと、正直ここは不気味だとしか言いようがない構造が出てくる。

今回はこの銘柄を、機関投資家目線というより「決算書を斜め読みしない人間」の視点で解体してみる。

1Q決算、48億円の黒字は「何でできているか」

2027年3月期1Qは売上高63.27億円、営業利益48.43億円、純利益39.13億円。前年同期の営業赤字3.42億円から見れば、劇的な黒字転換だ。ここだけ切り取って「AIデータセンターがついに稼ぎ出した」と読むのは、たぶん早い。

構造:売上の88%が「一度きりの手数料」
売上63.27億円のうち55.78億円は、解約になった追加受注案件に関する案件組成・紹介手数料。単純にこれを除くと、売上は約7.50億円しか残らない。営業利益から同額を引いた参考値だと、約7.35億円の赤字になる計算だ。正式な調整後利益として会社が出している数字ではないので、あくまで自分で電卓を叩いた参考値だと思ってほしい。

つまりこの1Qは、データセンターがフル稼働して稼いだ48億円ではなく、契約を解約し、残存期間の想定粗利をもとに手数料を一括計上した48億円だった。監査法人の期中レビューは正常な結論で、「結論不表明」ではない。これは素直に安心材料だと思う。ただ、数字の中身は別問題だ。

通期予想、埋まっていない穴が742億円ある

会社予想は据え置き。売上高1,621.93億円、営業利益248.15億円、純利益87.04億円。この数字自体は変わっていないのだけれど、中身は変わった。もともとこの予想には、解約された追加受注案件の売上798.64億円が含まれていた。今残っているのは、55.78億円の紹介手数料だけだ。

差額742.86億円=通期予想の約45.8%
国内・オーストラリア・タイの3案件はいずれもフル稼働時期が後ろ倒しになっている。それでも会社は「別の大型パイプライン複数件で補える」として、予想を据え置いた。強気な判断ではあるけれど、現時点で契約名・単価・稼働日が開示された代替案件は出てきていない。次の決算までにここが埋まるかどうかが、この銘柄の実質的な分水嶺になる。

強気に見える材料 - GPUは確かに動き始めている

国内第1号データセンターでは、台湾Compal Electronicsとの売買契約に基づき取得したNVIDIA製B300搭載GPUサーバーの搬入が実際に始まっている。内装・電気・空調の工事もほぼ完了していて、順次セットアップが進んでいる段階だ[1]。「提携しました」で止まっている話ではなく、物理的に機材が動いているという事実は、素直に評価していいと思う。

調達契約も規模だけ見れば派手だ。国内B300(GPU5,080基・約509億円)、タイB200(GPU4,696基・約411億円)、豪州B300(GPU10,000基・約814億円)。B300をこれだけまとめて確保できているなら、供給網としての希少性は本物かもしれない。8月末にはタイのGPUリソースを米大手AIインフラ事業者に最大5,000基・36カ月貸し出す方向で覚書も結んでいる。ただしこれはMOUで、価格も規模も開始時期も法的拘束力はまだない。

見かけの割安感について
9月7日終値1,577円、発行済株式数3,759万9,951株ベースで時価総額は約593億円(要出典確認:発行済株式数は変更報告書の提出日によって前後する)。会社予想の純利益87.04億円が実現するなら、現状株数ベースのPERは約6.8倍で、確かに安い。ただし後述する新株予約権を完全に織り込むと、完全希薄化後PERは約12.3倍まで上がる。結局のところ、割安かどうかは「利益87億円が本当に出るか」でほぼ決まる、それだけの話だ。

危険材料 - こっちのほうが正直、量も重さもある

まず新株予約権。第23回新株予約権は行使価額1,250円の固定型で、発行時点の潜在株式数は4,400万株、最大希薄化率は約199%という設計だった。8月12日時点の残存潜在株式は約3,020万株(要出典確認)。発行済株式数3,760万株に対して、今後さらに約80%の株式が出てくる余地がある。行使価額1,250円に対して株価は1,577円だから、割当先には行使する経済合理性がある。会社に約377.6億円の資金が入る一方で、同数の新株が市場に出てくる。財務にはプラス、需給にはかなりの劇薬だ。

信用買い残と、行使売りが重なる構図
9月3日時点で信用買い残807万6,100株、信用売り残168万6,600株、信用倍率4.79倍(要出典確認)。発行済株式数に対する買い残比率は約21.5%とかなり高い。株価が戻ればやれやれ売り、下げれば追証と投げ売り。新株予約権の行使売りと信用買い残がほぼ同時に存在しているので、好材料が出ても上値が軽くなりにくい構造になっている。空売りも一定量あるので、正式契約や稼働開始のニュースが出れば踏み上げる場面はあるかもしれないが、恒常的な圧力としてはワラントと信用買い残のほうを重く見ておきたい。

資金繰りも軽視できない。1Q末の現金・預金はわずか7.62億円。これに対して公表済みの主要GPUサーバー取得契約だけで合計約1,734億円ある。前受金・借入・新株予約権の行使資金を組み合わせて回す設計だとしても、順番がひとつずれれば借入が膨らむし、顧客の正式契約が遅れればサーバー納入と稼働もそのまま遅れる。2026年3月期は営業利益35.44億円に対して営業キャッシュフローは49.13億円のマイナス。主因は売上債権の増加104.59億円で、期末現金はたった3.96億円しか残らず、新株予約権行使による131.47億円の調達で穴を埋めていた。1Q末の売掛金・契約資産も87.90億円ある。損益計上と現金回収は別物だということを、この会社の数字は何度も教えてくれる。

大口契約はナウナウジャパンという2022年設立・資本金1,000万円の会社を介した間接契約で、財務状態も最終顧客も守秘義務で非開示になっている。非開示そのものが不正を意味するわけではないけれど、業績の大部分を占める商流としては、率直に言って透明性が低い。

まだ決着していない疑惑と訴訟
2025年10月、米Wolfpack Researchが「データセクションの唯一の主要顧客は中国軍関連指定を受けたテンセントであり、最先端GPUの提供は米国の輸出管理規制に違反する」とする空売りレポートを公表し、株価は数日で約4割下落した。会社側はこの指摘を事実無根としており、2026年7月31日に米ペンシルベニア州東部地区連邦地方裁判所へ、記事の取下げと損害賠償を求めて提訴している[3]。ただし請求金額は現時点で未定で、顧客の正体は結局どちらの側からも開示されていない。どちらかが撤回したわけではなく、両方の主張が並んだまま契約自体が消えてしまった、という状態が続いている。ここは「決着済みの過去の話」ではなく、係争中の未解決事項として見ておくべきだと思う。

最後にもうひとつ。大株主のFirst Plus側は新株予約権を持ちながら、保有株を市場外で処分し続けている。8月25日には議決権ベースで11.91%から9.77%へ低下し、主要株主から外れた[5]。新株予約権を大量に保有する側が、普通株を淡々と処分していくという構図は、需給を見るうえで頭の片隅に置いておいたほうがいい。

結局、どこを見ていればいいのか

強気派が見るべきなのは、GPU数ではなく稼働日だ。国内B300の実稼働日、豪州・タイ案件の正式契約、料金と最低利用保証、顧客前受金の入金、そして営業キャッシュフローの黒字化。ここが揃ってくれば、株価1,577円という数字はかなり違って見えてくるはずだ。

弱気派が見るべきなのは、売上742億円の穴、残存約3,021万株のワラント、信用買い残約808万株、手元現金7.62億円、巨額設備契約と借入依存、そして大株主による株式処分。この5つ、いや6つは、決算が良く見えるたびに忘れられがちだけれど、消えてなくなったわけではない。

なおの独自考察
長年こういう決算を見ていると、「1Qで急に黒字化した銘柄」には二種類しかないことがわかってくる。本当に事業が変わった会社と、決算のタイミングに合わせて数字を作った会社。データセクションがどちらなのか、正直まだ自分にも判断がつかない。48億円の営業利益は確かに帳簿の上には存在するし、B300の搬入というファクトも嘘ではない。ただ、それを毎四半期続く利益だと思ってPERを計算するのは、たぶん危ない賭けだ。個人的には、こういう「材料が多すぎて逆に何を見ればいいかわからなくなる銘柄」ほど、需給の歪みに乗って短期で刈られる展開が起きやすいと思っている。正式契約と実稼働が確認されるまでは、割安株というより予想達成に賭けるイベント株。逆張り欲がうずく銘柄ほど、自分は一歩引いて見るようにしている。
出典・参考資料
[1] データセクション「2027年3月期 第1四半期決算短信〔日本基準〕(連結)」2026年8月14日(TDnet) https://www.release.tdnet.info/inbs/140120260814521484.pdf
[2] データセクション「国内第1号のAIデータセンターにNVIDIA製B300搭載GPUサーバーの搬入を開始」2026年7月17日(PR TIMES) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000084.000036921.html
[3] データセクション「訴訟提起に関するお知らせ」開示要旨(2026年7月31日提訴) https://finance.biggo.jp/news/jpx_tdnet_140120260803506704
[4] Wolfpack Research 空売りレポート(2025年10月8日公表)に関する報道 https://x.com/WolfpackReports/status/1975758389914337585
[5] FIRST PLUS FINANCIAL HOLDINGS PTE. LTD. 大量保有報告書データベース https://maonline.jp/db/companies/3905/shareholding
※信用取引残高・完全希薄化後PER等の一部数値は要出典確認。取引所発表の最新値を必ず個別にご確認ください。本稿は個別銘柄の売買を推奨するものではありません。

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