中国32%減でもポルシェが復活した本当の理由|オーナーの本音

投資・マーケット

正直に書く。うちのガレージには981ケイマン(長期入院中)が停まっている。だから今回のポルシェの決算を、他人事として数字だけ追うことができなかった。2025年の営業利益率が1.1%まで落ちたというニュースを見たとき、真っ先に頭に浮かんだのは「このブランド、大丈夫か」という単純な不安だった。

長年相場を見ていると、業績が壊滅的な数字になった会社の株はだいたい二つに分かれる。本当に終わっている会社と、あえて痛みを先取りして飲み込んでいる会社。ポルシェがどちらなのか、ケイマン乗りとしてではなく、いち投資家として一度冷静に数字を並べてみることにした。

まず、2025年の数字がどれだけ酷かったか

ポルシェAGの2025年通期決算は、営業利益56.37億ユーロ→4.13億ユーロ。営業利益率にすると14.1%から1.1%。自動車事業だけで見ると52.86億ユーロ→0.90億ユーロ、利益率は14.5%からわずか0.3%まで落ちている。ここは公式発表ベースの数字なので間違いない。

この落ち込みの中身
2025年の一時費用は合計で約39億ユーロ。内訳は商品戦略の見直し・事業規模縮小が約24億ユーロ、バッテリー関連が約7億ユーロ、米国関税が約7億ユーロ。つまり「売れなくなって利益が消えた」というより、「戦略転換の後始末を1年で一気に処理した」という側面が大きい。この切り分けをせずに1.1%という数字だけを見ると、実態より悪く見える。

とはいえ、一時費用だけの話に逃げるのも違う気がしている。中国市場の失速とEV戦略の読み違えは、一時費用では説明できない構造的な問題だからだ。

中国は、正直まだ厳しい

2026年上半期(1〜6月)の中国での販売台数は14,501台。前年同期比で32%減った。これは看過できない数字で、ついにポルシェの中国販売台数がドイツ本国(14,938台)を下回った。かつて中国はポルシェにとって最大級の市場で、2021年前後には年間10万台近く売れていた市場だ。それが今、ドイツより少ない。

まだ解決していないリスク
ポルシェ自身は「量より価値を優先する」路線を明言していて、値引きで台数を取り戻すつもりはなさそうに見える。これはブランドとしては正しい判断だと思う一方、中国のディーラー網を150店舗規模から2026年中に80店舗程度まで減らす計画も進んでいて、市場そのものからある程度撤退する覚悟を決めているように読める。中国依存を前提にした過去の成長モデルには、もう戻らないつもりなのかもしれない。

でも、半年でここまで数字は動いていた

ここが今回いちばん書きたかったところで、正直この記事を書くまで自分も把握していなかった。2026年7月に発表されたH1(1〜6月)決算では、営業利益率が5.5%から7.8%まで戻っている。営業利益は前年同期比+34%の13.48億ユーロ。台数は減っているのに利益は増えているという、ねじれた状態だ。

回復を支えているもの
戦略転換に伴う一時費用が、前年同期の約8億ユーロから今期は約1億ユーロまで縮小している。それに加えて、高マージンの911(GTS・Turbo・GTなど)の販売が伸びていることが利益を押し上げている。逆にタイカン・パナメーラ・マカンといったEV寄りのラインナップは苦戦している。台数で勝負する車種より、911を核に据えた収益構造に急速に戻りつつある。

2026年通期のガイダンスは営業利益率5.5〜7.5%だったはずが、上半期だけですでにその上限を超えている。もちろん下半期も同じペースで進む保証はどこにもないし、中国が32%減のまま反発の兆しを見せていない以上、楽観しすぎるのは危険だとも思う。それでも「再生には長い時間がかかる」という3月時点の空気感より、実際の回復ペースは速いというのが今の正直な感触だ。

9,000人、全体の約2割という痛み

2026年7月、ポルシェは労使協定として追加で5,000人の人員削減に合意した。これまでの3,900人分の削減と合わせて、2035年までの累計は約9,000人。2024年末時点の従業員42,600人からすると、およそ2割にあたる規模になる。自然減・早期退職・希望退職を軸にした削減で、整理解雇はしない代わりに2035年までの雇用保証と引き換えという形だ。

この規模の削減が「絶好調な会社」で起きることはない。ただ、雇用を守りながら固定費を落とすという設計を見る限り、パニックで人を切っているというより、10年がかりで筋肉質な会社に作り替えるつもりなんだと思う。ここは正直、時間が経ってみないと評価しづらい部分ではある。

ケイマン乗りとして、この数字をどう見るか

EVシフトを急ぎすぎた反省から、ポルシェは911・718を中心にした内燃機関・ハイブリッド・EVの併存路線に戻っている。これは正直ほっとした部分がある。ケイマンやボクスターに乗っている人間からすると、あのエンジンフィールや音を「環境性能で殺される」感覚には抵抗があったし、同じことを感じていた既存オーナーは少なくないはずだ。数字の面でも、911を中心とした高マージン車種が今の利益回復を牽引しているのを見ると、顧客が本当に求めていたものと会社の戦略が、ようやく噛み合い始めたようにも見える。

なお@HAVE MARCYの独自考察
ここからは完全に主観。中国の32%減は、正直まだ底が見えていない気がする。ディーラー網を半分近くまで削るという判断は、「一時的な調整」というより「その市場規模を前提にしない経営に切り替えた」宣言に近いと読んでいる。それでもH1の営業利益率7.8%という数字は、想定より早いペースで筋肉質になっているサインだと思う。台数を追わずに利益率で評価する会社に変わったのだとすれば、投資家目線でもオーナー目線でも、悪い変化ではない。ただし10月のCapital Markets Dayで示される中期戦略次第で、この評価はまだひっくり返る余地がある。ここは正直、期待と警戒が半々というのが今の本音だ。

まとめ:数字で見る限り、まだ終わっていない

「営業利益率1.1%」という数字だけが独り歩きすると、ブランドの終わりのように見えてしまう。でも一時費用を除いた実態と、直近の半年で7.8%まで戻ってきているペースを合わせて見ると、少なくとも今のところは「崩壊」より「痛みを先取りした再構築の途中」に近い。中国という最大の不確定要素は残ったままだけれど、911を中心に据え直した戦略と、利益率で評価する姿勢そのものは、ファンとしてもちゃんと見ていきたいと思う。

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