正直に書く。うちのガレージには981ケイマン(長期入院中)が停まっている。だから今回のポルシェの決算を、他人事として数字だけ追うことができなかった。2025年の営業利益率が1.1%まで落ちたというニュースを見たとき、真っ先に頭に浮かんだのは「このブランド、大丈夫か」という単純な不安だった。
長年相場を見ていると、業績が壊滅的な数字になった会社の株はだいたい二つに分かれる。本当に終わっている会社と、あえて痛みを先取りして飲み込んでいる会社。ポルシェがどちらなのか、ケイマン乗りとしてではなく、いち投資家として一度冷静に数字を並べてみることにした。
まず、2025年の数字がどれだけ酷かったか
ポルシェAGの2025年通期決算は、営業利益56.37億ユーロ→4.13億ユーロ。営業利益率にすると14.1%から1.1%。自動車事業だけで見ると52.86億ユーロ→0.90億ユーロ、利益率は14.5%からわずか0.3%まで落ちている。ここは公式発表ベースの数字なので間違いない。
とはいえ、一時費用だけの話に逃げるのも違う気がしている。中国市場の失速とEV戦略の読み違えは、一時費用では説明できない構造的な問題だからだ。
中国は、正直まだ厳しい
2026年上半期(1〜6月)の中国での販売台数は14,501台。前年同期比で32%減った。これは看過できない数字で、ついにポルシェの中国販売台数がドイツ本国(14,938台)を下回った。かつて中国はポルシェにとって最大級の市場で、2021年前後には年間10万台近く売れていた市場だ。それが今、ドイツより少ない。
でも、半年でここまで数字は動いていた
ここが今回いちばん書きたかったところで、正直この記事を書くまで自分も把握していなかった。2026年7月に発表されたH1(1〜6月)決算では、営業利益率が5.5%から7.8%まで戻っている。営業利益は前年同期比+34%の13.48億ユーロ。台数は減っているのに利益は増えているという、ねじれた状態だ。
2026年通期のガイダンスは営業利益率5.5〜7.5%だったはずが、上半期だけですでにその上限を超えている。もちろん下半期も同じペースで進む保証はどこにもないし、中国が32%減のまま反発の兆しを見せていない以上、楽観しすぎるのは危険だとも思う。それでも「再生には長い時間がかかる」という3月時点の空気感より、実際の回復ペースは速いというのが今の正直な感触だ。
9,000人、全体の約2割という痛み
2026年7月、ポルシェは労使協定として追加で5,000人の人員削減に合意した。これまでの3,900人分の削減と合わせて、2035年までの累計は約9,000人。2024年末時点の従業員42,600人からすると、およそ2割にあたる規模になる。自然減・早期退職・希望退職を軸にした削減で、整理解雇はしない代わりに2035年までの雇用保証と引き換えという形だ。
この規模の削減が「絶好調な会社」で起きることはない。ただ、雇用を守りながら固定費を落とすという設計を見る限り、パニックで人を切っているというより、10年がかりで筋肉質な会社に作り替えるつもりなんだと思う。ここは正直、時間が経ってみないと評価しづらい部分ではある。
ケイマン乗りとして、この数字をどう見るか
EVシフトを急ぎすぎた反省から、ポルシェは911・718を中心にした内燃機関・ハイブリッド・EVの併存路線に戻っている。これは正直ほっとした部分がある。ケイマンやボクスターに乗っている人間からすると、あのエンジンフィールや音を「環境性能で殺される」感覚には抵抗があったし、同じことを感じていた既存オーナーは少なくないはずだ。数字の面でも、911を中心とした高マージン車種が今の利益回復を牽引しているのを見ると、顧客が本当に求めていたものと会社の戦略が、ようやく噛み合い始めたようにも見える。
まとめ:数字で見る限り、まだ終わっていない
「営業利益率1.1%」という数字だけが独り歩きすると、ブランドの終わりのように見えてしまう。でも一時費用を除いた実態と、直近の半年で7.8%まで戻ってきているペースを合わせて見ると、少なくとも今のところは「崩壊」より「痛みを先取りした再構築の途中」に近い。中国という最大の不確定要素は残ったままだけれど、911を中心に据え直した戦略と、利益率で評価する姿勢そのものは、ファンとしてもちゃんと見ていきたいと思う。
