売れるネット広告社(9235)決算の異常な振れ幅をどう読むか

投資・マーケット

黒字200万円のはずだった会社が、11億円の赤字になった。

その翌日。

会社が出してきたのは、

2027年7月期 会社計画
売上高 50.04億円
営業利益 2.02億円
純利益 1.30億円

という成長計画だった。

かなり振れ幅が大きい。

売れるネット広告社グループ(9235)を見ていると、IRを1本ずつ追うだけでは、この会社が良くなっているのか悪くなっているのか、正直分かりにくくなってきた。M&A。第三者割当。株式交換。新規事業。AI。海外。そして大幅な下方修正。材料は多い。だから今回は材料の数ではなく、その材料が最終的にどこへ向かっているのか、そこから見てみたい。

まず「11億円赤字」の中身を見る

2026年7月期の当初予想は、売上高18.8億円、営業利益1,400万円、純利益200万円だった。一応、黒字予想だった。それが期末直前になって、売上高16.4億円、営業損失5.3億円、純損失11億円まで落ちた。

200万円の黒字から11億円の赤字。さすがに、「ちょっと計画が未達でした」というレベルではない。

ただし、11億円すべてを本業の悪化と考えるのも違う。今回かなり大きな減損や評価損を出している。

今期計上した一過性損失(合計で約8億円規模)
M&A関連費用/貸倒引当/在庫評価減/ソフトウェア減損/オフィス関連減損/投資有価証券評価損/クロスボーダーEC関連ののれん減損

見方を変えると、2026年にかなりまとめて悪いものを落とした、とも言える。こういう決算は翌期の数字が良く見えやすい。減損した資産の減価償却費は軽くなる。一過性の損失もなくなる。2027年の利益が改善する理屈自体はある。

ここまでは強気側の話。でも、そこで終わらない。

一過性費用を外しても赤字だった

ここが一番大事だと思う。今回の営業損失は5.3億円。会社説明では、一過性費用を除いても実質的に約2.4億円の営業赤字が残る。

つまり、減損を全部出したから赤字になりました、ではない。本業もまだ赤字。ここを飛ばして、「膿を出し切ったから来期は黒字」とだけ見るのは危ない。

膿を出した。でも体力まで戻ったわけではない。そんな状態に見える。

それでも2027年は売上50億円

翌日出てきた2027年計画はかなり派手だ。売上50.04億円。2026年予想16.4億円から見れば、ほぼ3倍。これだけを見ると、本当にそんなに伸びるのか、と思ってしまう。

ただ、中身を見ると少し景色が変わる。

2027年7月期 売上50.04億円の内訳
既存事業 17.24億円
M&A・新規連結 32.80億円

つまり50億円のうち約3分の2は、買収した会社などの売上になる。既存事業が突然3倍になる計画ではない。ここはかなり重要。会社そのものを買って売上規模を大きくする戦略だから、50億円という数字だけなら不可能な数字ではない。

問題は別のところにある。売上ではなく、利益が残るのか、という話だ。

50億円売って営業利益2億円

2027年の営業利益予想は2.02億円。売上50.04億円に対して営業利益率は約4%。この数字を見て、売上50億円すごい、で終わると少し危ない。50億円売って、営業利益は2億円。決して余裕のある利益率ではない。

利益の積み上げ構造
既存事業営業利益 約2.94億円
M&A・新規連結営業利益 約3.03億円
合計 約5.98億円

ここから差し引かれるもの――
本社費用 約2.37億円
のれん・M&A関連費用 約1.59億円

最終的に残るのが約2.02億円

数字を並べてみると分かる。かなりギリギリだ。どこかの子会社が計画より5,000万円悪い。M&A費用が予定より増える。立ち上げが数か月遅れる。それだけで利益計画は簡単に動く。

売上50億円という大きな数字より、2億円を本当に残せるのか。自分ならこっちを見る。

M&Aで会社を大きくするということ

今回の成長戦略はかなり明確だ。自力だけで成長するのではなく、会社を買って規模を作る。これは悪いことではない。現金を大量に使わず、株式交換などを使えば、手元資金を残したまま事業を増やすこともできる。

ただし株主には別の問題が出てくる。株数だ。

発行済株式数の変化
4月末時点 約770万株
現在 約962万株(数か月で約25%増)

会社は大きくなった。でも株の枚数も増えた。ここはかなり大事。企業価値が25%増えても株数が25%増えれば、単純には1株当たり価値は増えない。だからM&Aを見る時は、売上が何億円増えるか、だけでは足りない。そのM&Aで1株当たり利益が増えるのか。これを見なければならない。

第三者割当の株はその後どうなったのか

5月にはADWAYS ASIA HOLDINGSへ第三者割当を行い、約39.7万株を発行している。ところがその後、ADWAYS側は市場売却を進めた。8月25日時点で累計約33.3万株を売却。残りは約6.4万株。

資本業務提携が失敗したという話ではない。ただ、長期で株を持ってくれる戦略株主というイメージで見ていたなら、少し違う。市場から見れば単純に売り物が出てきた。これも株価が重くなった理由の一つとして無視はできない。

そして気になる純資産

ここは次の本決算でかなり見たい。第3四半期末の自己資本は約5.78億円。その後5月に第三者割当で約2.09億円を調達している。一方、通期純損失予想は11億円。第3四半期までの純損失は約1.95億円なので、単純に考えれば第4四半期だけで9億円前後の損失が発生する。

もちろん、5.78億円プラス2.09億円マイナス9億円、と単純計算して、はい債務超過、とはならない。資本取引やその他の変動もある。だから断定はしない。

ただ、かなり気になる。今この株を見るなら株価438円より、2026年7月末に純資産がいくら残ったのか。こちらの方が重要だと思う。もし純資産が想像以上に薄くなっていれば、その後の成長資金をどうするのかという話になる。借りるのか。また株を出すのか。M&Aを株式対価で続けるのか。ここから先は全部、既存株主の価値に関係してくる。

信用買いも軽くない

8月28日時点の信用買い残は約61万株。信用売り残は0株。発行済株式数に対して6%強。小型株としてはそこそこ重い。しかも8月末の株価は490円前後。9月8日は438円。最近買った信用組の中には、すでに含み損になっている人もいるはずだ。

こうなると、下がる、信用買いが耐えられなくなる、投げる、また下がる、という流れになりやすい。しかも制度信用の売り残はほぼない。よく小型株で言われる「空売りを踏み上げれば一気に上がる」という構図でもない。需給だけなら、今は強気とは言いにくい。

この会社で一番気になるのは「予想精度」

実は自分が一番警戒しているのは、11億円の赤字そのものではない。予想とのズレだ。最終利益200万円予想。そこから最終赤字11億円。もちろん減損は期末に判断するものもある。でも、ここまで変わると、会社が将来をどう見積もっているのか、その精度まで見たくなる。

Bitcoin Saverもそう。クロスボーダーECもそう。案件がある。将来性がある。進捗している。そういうIRと、実際に売上になる、実際に利益になる、実際に現金になる、は全部違う。IRをたくさん出す会社ほど、ここを混ぜない方がいい。材料の数ではなく、最後にキャッシュになったのか。自分はそこを見る。

強気側から見るなら

もちろん悪い話ばかりではない。2026年にかなり大きな損失処理をした。2027年は一過性費用が消える。買収した企業の売上も実在する。M&Aによって会社規模そのものが変わる。時価総額約42億円に対して、会社計画売上50億円。売上だけを見るなら、ものすごく割高という感じでもない。2027年に本当に営業利益2億円。その次に3億、4億。こうやって利益が積み上がるなら、今の株価評価が変わる可能性は十分ある。だから完全否定する銘柄でもない。むしろ数字が出始めた時の変化は大きいと思う。

ただ、今はまだ「回復した会社」ではない

自分なら今の売れるネット広告社グループを、業績回復株、とは呼ばない。まだ早い。今は、M&Aで業績回復を証明しようとしている会社、という位置づけ。似ているようで全然違う。

2026年に大きな損失を出した。2027年には大きな売上計画を出した。その間にあるものが、実績だ。ここがまだない。

次に見る数字はシンプルだと思う。純資産はいくら残ったか。現金はいくらあるか。借入金はいくらか。営業キャッシュフローはどうなったか。のれんはいくら積み上がったか。買収した会社は利益を出しているか。そして何より、株数を増やした以上に利益を増やせるのか。

売上50億円という言葉は派手だ。でも株主に必要なのは売上50億円ではない。1株当たりの利益が増えること。結局ここに戻る。

材料は多い。IRも多い。期待もある。でも今の段階では、まだ地図の途中だと思う。矢印を出すには早い。次の決算(2026年9月14日予定)で見るべきものは、かなりはっきりしてきた。

なおの独自考察
正直、この銘柄は好きでも嫌いでもない。ただ、11億円の赤字を出した翌日に50億円の絵を出してくる、そのタイミングの作り方に少し引っかかるものがある。悪材料と好材料を1日で抱き合わせにすると、悪材料の重さが薄まって見える。狙ってやっているのか、決算スケジュール上たまたまそうなっただけなのか、自分にはまだわからない。信用買い残が61万株残った状態で次の本決算を迎えるのは、正直ここは不気味だ。株数が25%増えた事実を、既存株主がどこまで意識しているのかも気になる。逆張り欲で言えば、次の決算で純資産の数字が思ったより残っていたら、少しだけ拾いたくなる自分もいる。ただ今はまだ、その判断をするだけの材料が揃っていない。
参考・出典
本記事内の業績数値・株式数・信用残高・株価水準は、同社決算短信および適時開示資料、証券会社提供の株式情報ページを基にしています。証券コード9235、時価総額約42.2億円、9月8日終値438円は取材時点の複数の株価情報サイトで確認済みです。第3四半期時点の自己資本額、第三者割当による調達額、ADWAYS ASIA HOLDINGSの持分売却株数については、会社発表の適時開示原本での再確認を推奨します(要出典確認)。次回決算発表は2026年9月14日を予定として公表されています。

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