バイク王3377決算、純利益は通期予想超えでも上方修正しない違和感

投資・マーケット

バイク王&カンパニーが10月5日、2026年11月期第3四半期決算を発表しました。

数字だけを見ると、かなり強いです。

9カ月累計金額前年同期比
売上高291.24億円+2.5%
営業利益8.39億円+60.1%
経常利益11.00億円+57.4%
純利益7.94億円+119.8%

売上はわずか2.5%増なのに、営業利益は60%増、純利益は2.2倍。「売上を増やして利益を作った」というより、会社が今期掲げている「売上高より利益成長を重視」という方針が、ようやく数字にはっきり出てきた決算だと思います。

ただ、今回一番引っ掛かったのはそこではなくて、通期予想に対する進捗率のほうでした。

営業利益97.5%、純利益はもう通期予想を突破している

項目通期予想(9/30修正後)3Q進捗率
売上高388億円75.1%
営業利益8.60億円97.5%
経常利益11.50億円95.7%
純利益7.50億円105.8%

しかもこの予想、古い数字ではありません。わずか5日前、9月30日に会社が上方修正したばかりの数字です。純利益に至っては、通期予想7.50億円をすでに上回る7.94億円を3Qまでで稼いでしまっている。

9月30日の上方修正の中身
営業利益:7.10億円 → 8.60億円(+21.1%)
経常利益:9.10億円 → 11.50億円(+26.4%)
純利益:5.70億円 → 7.50億円(+31.6%)
理由:オークション相場の堅調さ、仕入基盤の安定化、平均粗利額の上昇など(会社開示)

ここがちょっと不思議なところで、9月30日というのは3Q期間(6~8月)がもう終わった後なんですよね。会社は3Qの着地をほぼ把握したうえで、この数字を置いている。それでいて進捗はこれです。少し気になります。

4Qに必要な営業利益は、わずか2,100万円

通期予想から3Q累計を単純に引いて、前年4Qの実績と並べてみました。

4Q予想達成に必要前年4Q実績差
売上高約96.76億円――
営業利益約0.21億円約0.61億円約65%減でOK
経常利益約0.50億円約1.30億円約62%減でOK
純利益約▲0.44億円―赤字でもOK

営業利益は約2,100万円あれば足りる。純利益にいたっては、4Qで約4,400万円の赤字を出しても通期予想を達成してしまう計算です。前年は3Q累計の営業利益5.24億円に対して通期5.85億円だったので、4Qだけで約0.61億円稼いでいた。それが今期は約0.21億円の想定、前年4Qから65%減益でも届くわけで、正直、かなり保守的な置き方に見えます。

ただし「再上方修正確実」とは言えない
会社自身が「第4四半期は外部環境の不確実性に加え、次期以降に備えた投資や設備投資を予定している」と説明しています。費用を使うと明言している以上、4Qの低さを「絶対に上振れる」と決めつけるのは危険です。それでも、相当大きな費用を入れない限り、現在の予想にはかなり余裕があるように見えます(筆者分析)。

しかも3Q単体で、利益改善が加速している

累計の数字だけだと見えにくいんですが、6~8月の3Q単体経常利益は前年同期比で約2.5倍。売上営業利益率も前年同期の2.1%から6.0%まで跳ね上がっています。直近3カ月で、明らかに一段ギアが上がった。

理由は決算説明資料を見るとかなり分かりやすいです。

バイク事業の中身(前年同期比)
販売台数:+0.4%(ほぼ横ばい)
車輌売上単価:+3.1%
平均粗利額:+4.8%
→ 台数を増やしたのではなく、1台あたりから取れる利益が増えた

ここは結構大事なところで、中古の買取販売の会社が売上だけを追い始めると、在庫が膨らんだり、薄利で回したりしがちなんです。今回のバイク王はその逆で、台数はほぼ変わらないのに利益が増えている。量ではなく質で稼いでいる決算です。

粗利率は33.9%から35.0%へ

3Q累計の売上総利益は、前年96.27億円から今期101.88億円へ約5.8%増。売上の伸び2.5%を大きく上回っています。

利益率(3Q累計)前年今期
売上総利益率33.9%35.0%
営業利益率1.8%2.9%
経常利益率2.5%3.8%

会社が進めてきた原価率改善、在庫管理、販売効率の改善が、ようやく数字になり始めた形です。特にホールセールでは、平均粗利額の改善による増益効果が約3.99億円あって、今回の利益改善のかなり大きな部分をここが占めている。売上+2.5%だけ見ると地味な決算ですが、中身はまったく違います。私が今回一番評価しているのは、この部分です。

在庫が7.4億円減って、現金が7.5億円増えた

中古車や中古バイクの会社を見るとき、私は在庫をかなり気にします。表面上は売れているように見えて、裏で商品在庫がじわじわ膨らんでいるケースがあるからです。バイク王は、そこが逆でした。

運転資金の動き(前期末 → 3Q末)
商品在庫:67.57億円 → 60.16億円(約▲7.4億円)
現預金:20.55億円 → 28.08億円(約+7.5億円)
短期借入金:12.00億円 → 2.40億円(約▲9.6億円)

在庫を減らしながら現金が増え、短期借入金も大きく減っている。会社は、在庫回転率の向上に伴う運転資金の返済が短期借入金減少の要因だと説明していて、数字の並びとしては教科書みたいにきれいです。

借入金は半分以下、現預金が借入金を約19億円上回る

借入金前期末3Q末
短期借入金12.00億円2.40億円
1年内返済予定長期借入金2.58億円1.94億円
長期借入金6.03億円4.63億円
合計約20.61億円約8.98億円

借入金合計は約11.6億円減って、半分以下になりました。3Q末で現預金約28.1億円に対して借入金合計は約9.0億円、現預金のほうが約19億円多い計算です(リース債務などは含めていない、借入金3項目だけの単純比較です)。自己資本比率も53.8%から60.3%まで上がっています。この決算を見て資金繰りを心配するような会社ではなく、むしろ財務の余力が年々増している側です。

強気材料と危険材料

強気材料
・利益構造そのものが変わってきている。販売台数+0.4%に対して営業利益+60.1%、粗利率33.9%→35.0%
・在庫▲7.4億円、現金+7.5億円、短期借入▲9.6億円。売上を無理に膨らませた利益ではない
・通期予想が低い。4Qに必要な営業利益は約2,100万円で、先行投資をかなり織り込んだ数字に見える
・中期計画では2028年11月期に経常利益16億円、ROE12%以上が目標。今期予想11.5億円からまだ伸びしろがある
危険材料
・バイク市場そのものは成長市場ではない。国内保有台数は約1,021万台で前年比0.6%減(主力の原付二種以上は約618万台で1.3%増)
・好調の一部はオークション相場の高さに支えられている。会社自身がホールセール単価上昇の理由に挙げており、相場が崩れれば今の粗利は維持できないかもしれない
・4Qにはマーケティング、システム、営業DX、人材教育などへの先行投資を会社が予告している

会社が台数成長ではなく、粗利・在庫回転・CRM・整備・周辺サービスへと軸足を移しているのも、市場が大きく伸びない前提に立っているからでしょう。そこは冷静に見ておきたいところです。

株価414円、PER約8倍、PBR1倍割れ

10月5日の終値は414円。会社予想EPS52.41円で計算すると、予想PERは約7.9倍です。8月末時点のPBRは0.73倍で、会社自身も「PBR1倍を大きく下回っている」と問題視しています。

会社が認識しているPBR1倍割れの原因
① 利益のボラティリティ
② 成長期待の不足
③ 投資家認知と株式流動性の不足

要するに経営陣自身が「利益は出ても、市場から成長企業として見られていない」と分かっているということで、ここを変えられるかどうかが今後の株価にはかなり効いてくると思います。

信用需給と資金調達は、重しにはなっていない

信用買い残は9月25日時点で267,600株、10月1日の日次ベースでは310,700株まで増えています。売り残はゼロ。決算前に少し買いが入った形ですが、発行済株式約1,532万株に対しては約2%なので、信用買いだけで身動きが取れなくなる水準ではないでしょう。売り残がほぼないぶん踏み上げの燃料もなく、決算翌日は純粋に「この利益を市場がどう評価するか」の勝負になりそうです。

資金調達では、今年4月に従業員向け株式給付信託のため、自己株式40万株を1株398円で第三者割当処分しています(総額約1.59億円)。発行済株式の2.61%相当なので無視できる規模ではありませんが、事業資金が足りなくて打つワラントや公募増資とは性質がまったく違う。今のBSを見る限り、資金調達リスクよりも、借入金が減って現預金が積み上がっていくほうを見るべき会社です。

結論:この決算、私はかなり強いと思う

売上+2.5%。最初にこれだけ見たら地味です。でも営業利益+60%、経常利益+57%、純利益+120%で、粗利率は改善、在庫は減り、現金は増え、借入金は大きく減って、3Q単体の経常利益は約2.5倍。中身がかなりいい。

10月5日のPTSは19時台で411円前後、終値414円から大きな反応は出ていません。先週すでに上方修正を出していて、ある程度は織り込まれていたのでしょう。ただ、正直これは意外でした。

なおの独自考察
一番気になるのは、5日前に上方修正したばかりの通期予想です。営業利益8.60億円に対してもう8.39億円、純利益7.50億円に対してすでに7.94億円。それでも会社は据え置いた。4Qの投資をよほど大きく見ているのか、外部環境をかなり慎重に見ているのか、それとも、もう一段上振れる余地をあえて残しているのか。
経験上、小型株で「直前に上方修正済み」という決算は、市場が一度安心してしまって、翌日の反応が驚くほど薄くなることがあります。ニュースとしてはもう消化済み、という空気になる。でも中身まで消化されているかというと、たぶん違う。「営業利益97.5%進捗」より、「在庫を減らし、借金を減らしながら利益率が上がっている」ことのほうが、本当はずっと重い情報だと思うんです。
今のバイク王は、売上を追う会社から利益を残す会社へ変わろうとしている途中に見えます。この利益改善が2027年も続くなら、PER約8倍という今の評価はかなり低い。逆にオークション相場が崩れて粗利率が元に戻るなら、「今期だけ良かった会社」で終わる。どっちに転ぶか、まだ確信はありません。
ただ、誰も騒いでいない今夜のこの静けさは、少し不気味なくらいです。
次に見るべき数字は、売上ではない
① 粗利率35%を維持できるか:オークション相場が落ち着いても平均粗利額が保てるか
② 4Qの営業利益は本当に2,100万円程度まで落ちるのか:先行投資の規模と着地
③ 来期ガイダンス:2028年の経常利益16億円に向けた道筋が数字で示されるか

単なる「上方修正済みの好決算」で片付けるには、少し惜しい3Qだと思います。

出典
・バイク王&カンパニー「2026年11月期 第3四半期決算短信」「同 決算説明資料」「業績予想の修正に関するお知らせ(2026年9月30日)」ほか(バイク王&カンパニー IRライブラリー)
・3Q単体の経常利益・売上営業利益率:Yahoo!ファイナンス 決算情報
・信用取引残高:株探 バイク王&カンパニー
・株価・PTS価格:2026年10月5日時点の市場データ
※4Q必要額・前年4Q・借入金合計・現預金との差額・PER等は、決算短信の数値をもとにした筆者計算です。本記事は特定銘柄の売買を推奨するものではありません。

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