利益4倍・過去最高益なのに4Qは赤字。バリュエンス決算、増収の半分は”金の塊”だった

投資・マーケット

金曜の15時半すぎ、バリュエンス(9270)の本決算が出た。

営業利益57億円、前期の4.0倍。過去最高益。会社が7月に出していた予想(55億円)もきっちり上回って、来期も増益、配当は45円から55円へ。数字だけ並べると「何を迷う必要があるんだ」という決算なんだけど、短信を最後のページまでめくっていくと、第4四半期(6〜8月)だけ切り出したところで手が止まった。純利益が▲2.4億円、つまり赤字になっている。

通期は最高益で、最後の3か月だけ赤字。どっちを見ればいいのか。今夜はそこを、なるべく数字の側から解いていきたい。

データについて
本文の業績数値は、2026年10月9日開示の「2026年8月期 決算短信」「決算説明資料」「特別損失(減損損失)の計上に関するお知らせ」から引用しています。株価・金相場・市場規模など外部の数字は(要確認)と付けています。いずれも2024年以降の情報なので、最新情報は各自で確認してください。

総合判定:好決算(ただし「中身の半分」は金相場)

VERDICT

好決算

通期の売上・利益はすべて会社予想を上回り、過去最高益。来期も増収増益・増配の計画。ただ、売上の約3割は金地金の卸売で、相場の追い風を受けた部分が大きい。「金」を抜いても伸びているかが、この決算の本当の読みどころになる。

項目(百万円)前期
FY25
今期
FY26
前期比会社予想
達成率
売上高84,841106,656+25.7%100.6%
営業利益1,4535,7804.0倍105.1%
経常利益1,3155,3994.1倍102.7%
純利益6813,0734.5倍102.4%
売上総利益率25.1%26.3%+1.2pt―
1株配当10円45円4.5倍―

※会社予想は2026年7月10日時点の修正計画。出典:決算説明資料P.5

判定の理由:押さえるべき3つの数字

① 営業利益4.0倍、しかも7月の予想をさらに上回った

前期の営業利益は14.5億円。その前(FY24)は▲4.3億円の赤字だったから、2年で赤字から57億円まで来たことになる。7月の第3四半期時点で経常利益の進捗率はすでに97.5%に達していて、「通期予想は低すぎるだろう」という空気は正直あった。結果は営業利益で予想比105.1%。上振れ幅は大きくないけど、第4四半期に決算賞与やテレビCMをかなり積んだうえでの数字なので、意図的に「使い切った」印象が残る。

② 粗利率が上がった。小売とオークション手数料が効いている

売上総利益率(売上のうち、仕入れ原価を引いて手元に残る割合)は26.3%で、前期から1.2ポイント改善。中身を見ると、店舗とECでの小売売上が258億円(前期比+47.8%)、オークションの委託落札額(他社から預かった商品が落札された金額)が276億円(同+32.3%)と、どちらも大きく伸びた。

ここは地味に大事で、オークションで右から左に流すより、自社の小売で一般客に売るほうが1点あたりの粗利は厚い。委託のほうは在庫リスクを背負わずに手数料だけ取れる。どっちも「利益率を上げる方向」の伸び方なんだよね。

③ フリーキャッシュフローが3年ぶりにプラス

営業キャッシュフローが24.7億円の収入、投資キャッシュフローが16.0億円の支出で、差し引きのフリーキャッシュフロー(本業で稼いだお金から投資を引いた、自由に使えるお金)は+8.7億円。FY24が▲18.8億円、FY25が▲35.2億円だったことを考えると、会社が説明資料で「投資回収フェーズへ」と書いているのも、まあ言い過ぎではない。自己資本比率も23.8%から27.9%に戻った。

売上1,066億円のうち、327億円は「金の塊」だ

ここからは少し意地悪な話をする。

バリュエンスの売上は販路別に分かれていて、そのうち「卸売(地金)」、つまり買い取った金・プラチナを溶かして地金として業者に売る部分が327億円、前期比+48.0%。売上全体の約31%を占めている。そして今期の増収額218億円のうち、106億円、ほぼ半分(約49%)がこの地金から来ている。

増収218億円の内訳(前期比の増加額)

  • 卸売(地金):+106億円(増収分の約49%)
  • 小売(店舗・EC):+84億円(約38%)
  • オークション手数料:+7億円
  • その他(自社オークション商品売上など):残り

※決算短信P.3の販路別売上から算出。端数の扱いで合計は一致しません。

地金の売上というのは、会社の努力というより金価格の上昇で膨らむ性格のもの。粗利も薄い。2026年は金価格が歴史的な水準まで上がった年で(要確認)、「なんぼや」に金のネックレスを売りに来る人が増えた、という構図がそのまま数字に出ている。会社自身も説明資料で「FY26は地金相場上昇による追い風は一定あり」と認めている。

で、その追い風が止まったのが第4四半期。

第4四半期(6〜8月)FY25/4QFY26/4Q前年同期比
売上高21,74226,700+22.8%
仕入高17,57417,749+1.0%
営業利益1685063.0倍
純利益149▲241赤字転落

※単位:百万円。仕入高FY25/4Qは短信記載の増減額(+175百万円)から逆算。出典:決算説明資料P.5、決算短信P.2

仕入高の伸びが+1.0%にまで落ちている。短信の言葉をそのまま借りると「地金相場が軟調に推移したこと等から」。第3四半期までに抱えていた地金在庫を第4四半期で売り切ったので売上は+22.8%と伸びたように見えるけど、入口(仕入)はもう止まりかけていたわけだ。

赤字の主犯は別にいる。自動車事業の減損3.1億円。英国のカスタム車ブランド「TWISTED」の国内独占販売権を2023年に取ったものの、排出ガス試験の対応に想定以上の時間がかかって販売開始が大幅に遅れた、という説明だった。固定資産を「備忘価額」、要するにほぼゼロまで切り下げている。営業利益5億円に対して減損3億円、そこに税金が乗って最終赤字。これが4Q赤字の正体。

正直に言うと、本業がおかしくなった赤字ではない。ただ、ブランド品リユースの会社が「自動車」に手を出して3年でほぼ全損、というのは経営の打ち手として記憶しておいていい失敗だと思う。

あわせて読みたい

7月の第3四半期決算、経常利益の進捗率97.5%という数字が出た日にバリュエンス株は−8.6%(要確認)。「良い決算なのに下がる」の仕組みはここに書いた。

▶ 好決算で株を買った奴が毎回カモにされる、シンプルすぎる理由

来期予想は「強気」か「弱気」か

百万円FY26実績FY27計画前期比
売上高106,656115,000+7.8%
売上総利益率26.3%26.5%+0.2pt
販管費22,28323,750+6.6%
営業利益5,7806,750+16.8%
純利益3,0734,000+30.2%
EPS/配当233.15円/45円303.44円/55円―

判定は「強気」。ただし、控えめな強気。

営業利益+16.8%は、今期の4.0倍から見れば急ブレーキに見える。でも前提をよく読むと、会社は「地金仕入高は一定程度落ち込むことを考慮」「足元の金相場が続く前提」と書いていて、つまり金の追い風を織り込まないで、それでも二桁増益を出すと言っている。売上の伸び+7.8%に対して販管費は+6.6%に抑える計画で、増えた売上がそのまま利益に落ちる形。これはこれで筋の通った計画だと思う。

純利益の+30.2%は少し割り引いて見たい。今期は減損4.9億円(自動車3.1億円を含む)と重い税負担があったので、その反動が乗っているだけ、という部分がある。

中期経営計画(FY25〜FY27)の最終年度でもある。KPIの進み具合はこんな感じ。

中計KPIFY26実績FY27目標状況
オークション委託比率44.8%40%以上前倒し達成
リペア提供件数5万件超5万件以上前倒し達成
小売売上高比率24.3%25%以上あと一歩
リピーター比率49.6%50%以上あと一歩
なんぼや以外の仕入比率19.6%25%以上遠い

出典:決算説明資料P.21

目立つのは一番下。「なんぼや以外(海外含む)の仕入比率」が19.6%で、目標25%にはかなり距離がある。国内の看板店舗への依存がまだ強いということで、来期の国内10〜15店舗・海外15店舗以上の出店計画は、半分はこの数字を埋めにいく動きだと読んでいる。

注目ポイント:いちばん良いところ、いちばん怖いところ

ポジティブ:委託GMV +32.3%、「在庫を持たずに稼ぐ」部分が育っている

自社オークションの委託落札額は276億円(前期比+32.3%)、第4四半期単独でも76億円(前年同期比+31.1%)で過去最高。それに連動して手数料売上も41.6億円(+21.8%)。この部分は金相場とほぼ関係がない。海外のオークション参加パートナーも1,425社から1,762社に増えた。地金を抜いて考えたときに残る「本当の成長」は、たぶんここ。

ネガティブ:金相場依存と、借金で回す在庫モデル

地金売上が前期比+48%で売上の3割強。来期の計画が「足元相場が継続する前提」に立っている以上、金価格が大きく崩れると、仕入・売上の両方に効いてくる。

もう一つ。有利子負債(リース含む)は201億円で、手元現金72億円の約2.8倍。在庫(商品)は139億円まで積み上がっていて、1年以内に返済期限が来る長期借入金も73億円ある。在庫回転期間56日と回りは速いので今すぐ危ない話ではないけど、ROE34.9%という数字は、この借入のレバレッジ込みの数字だということは頭に入れておきたい。

この会社は、いま何にお金を使っているのか

製造業みたいに工場を建てる会社ではないので、設備投資の額自体は小さい。今期の投資キャッシュフロー▲16億円の内訳はこうなっている。

FY26の投資(キャッシュフロー計算書ベース)

  • システム開発 6.7億円:オークションプラットフォームの機能強化、グローバルEC基盤の構築
  • 店舗・倉庫 6.5億円:買取店舗の新規出店、物流倉庫の増床
  • 差入保証金 2.9億円:新規出店・契約更新に伴う敷金など

これとは別に、損益計算書の中ではテレビCMなどの広告宣伝費(4Qは本来ベースで8.8億円、前年同期比+57.6%)と人員増(正社員1,124名→1,209名)に厚くお金を使っている。在庫の積み増しにも35億円。

一番お金を食っているのは、実は設備ではなく「在庫」と「人と広告」だ。

将来の稼ぎやすさにどう効くか、という話をすると、システム投資は効き方が良い部類に入る。オークション基盤もECも、一度作ってしまえば取扱高が2倍になってもコストは2倍にならない。委託比率が上がるほど、在庫を持たずに手数料が積み上がるので利益率は上がっていく。ここは素直に評価していい。

テレビCMは評価が分かれる。会社の調査ではCM前に10.8%だった「なんぼや」の認知率が、8月のCM後に21.6%まで上がったそうで(会社発表・インテージ調査)、数字としては効いている。ただ、広告は止めた瞬間に効果も止まる種類の支出で、来期計画でも「認知施策へ費用をアロケーション」と続ける前提になっている。売上が伸びる限りは問題ないけれど、金相場が逆回転したときに真っ先に重荷になるのはこの固定費だと思う。

そして自動車事業。これも「お金を使った先」の一つで、3年かけて結果は減損3.1億円。新しい事業に張る姿勢自体は悪くないけど、本業との距離が遠い投資ほど回収できていない。そこは来期以降、使い道の選び方として見ておきたい。

なおの独自考察:3連休明けをどう見るか

決算は10月9日(金)の発表で、月曜はスポーツの日。市場が反応するのは10月13日(火)になる。3日間、全員が同じ短信を読み込んでから寄り付くわけで、こういうときの初動は案外「みんなが読んだ結論」に寄りやすい。

株価は10月2日終値で1,848円(要確認)。来期予想EPS303.44円で割るとPERは約6.1倍、PBRは約2.4倍、予想配当55円で利回り約3.0%。リユース市場そのものは2025年に3兆4,636億円、2030年に4兆円という推計があるので(リフォーム産業新聞社、要出典確認)、成長市場の会社としてはPER6倍台はさすがに安く見える。

ただ、相場歴30年で何度も見てきたのが、こういう「数字のわりに安い」銘柄が安いまま放置されるパターンだ。理由はたいてい、市場がその利益を「一時的」と見ていること。バリュエンスの場合、その疑いの的はもちろん地金。7月の3Q決算で進捗率97.5%なのに−8.6%売られたのも(要確認)、今思えば「金でかさ上げされた利益にPERは払わない」という市場からのメッセージだった気がする。

シナリオ条件株価への影響(推測)
強気金相場が高止まり、委託GMV・小売が+20%以上を維持。1Q(2027年1月発表予定)で営業利益が前年同期の15億円を上回る「地金なしでも稼げる」が認識され、PERの見直しが入る余地
中立会社計画どおり+16.8%増益ペース。金相場は横ばい配当利回り3%前後を下支えに、レンジ推移
弱気金価格が大きく調整し、地金仕入が想定以上に減少。広告・人件費の固定費が残る「やはり金相場株だった」と判断され、来期予想の下方修正リスクを織り込みにいく

個人的に一番気にしているのは、1Q決算で「地金を除いた仕入高」がどれだけ伸びているか、の一点だ。会社は第4四半期に「時計・バッグを中心としたブランド仕入は好調」と書いているし、海外仕入高は前年同期比で8割増、と言っている。これが本当なら、金が止まっても入口は細らない。逆にここが鈍っていたら、今期の最高益は「金の年」だった、という話で終わってしまう。

なので、火曜の初動で飛びつくつもりは今のところない。3Q後の下げを見ても、この銘柄は決算直後の値動きより、その次の四半期で答え合わせされるタイプに見える。正直、PER6倍という数字の誘惑はけっこう強いんだけど。

用語ミニ解説

  • GMV:オークションなどでの取引総額。会社の売上ではなく「場で動いたお金の量」
  • 委託:他社から商品を預かって出品し、売れたら手数料を受け取る形。自社で在庫を持たない
  • 地金(じがね):金やプラチナを溶かして延べ棒などにしたもの。価格は国際相場に連動
  • 減損損失:設備などが将来稼げないと判断したとき、帳簿上の価値を切り下げて損失にすること
  • フリーキャッシュフロー:本業で稼いだ現金から投資に使った現金を引いた残り
  • PER:株価÷1株あたり利益。利益の何年分で株価が買えるか、の目安
  • ROE:自己資本に対してどれだけ利益を出したか。借入が多いと高く出やすい
本記事は決算資料をもとにした個人の考察で、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。株価・金相場の数値、シナリオ部分は推測を含みます。投資判断はご自身でお願いします。

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