深夜にチャートを眺めていて、ちょっと手が止まった銘柄がある。データセクション(3905)。1Qの営業利益48億円という数字だけ見ると、AIデータセンター事業がついに立ち上がったように見える。でも決算短信を開いて、売上の内訳を追っていくと、正直ここは不気味だとしか言いようがない構造が出てくる。
今回はこの銘柄を、機関投資家目線というより「決算書を斜め読みしない人間」の視点で解体してみる。
1Q決算、48億円の黒字は「何でできているか」
2027年3月期1Qは売上高63.27億円、営業利益48.43億円、純利益39.13億円。前年同期の営業赤字3.42億円から見れば、劇的な黒字転換だ。ここだけ切り取って「AIデータセンターがついに稼ぎ出した」と読むのは、たぶん早い。
つまりこの1Qは、データセンターがフル稼働して稼いだ48億円ではなく、契約を解約し、残存期間の想定粗利をもとに手数料を一括計上した48億円だった。監査法人の期中レビューは正常な結論で、「結論不表明」ではない。これは素直に安心材料だと思う。ただ、数字の中身は別問題だ。
通期予想、埋まっていない穴が742億円ある
会社予想は据え置き。売上高1,621.93億円、営業利益248.15億円、純利益87.04億円。この数字自体は変わっていないのだけれど、中身は変わった。もともとこの予想には、解約された追加受注案件の売上798.64億円が含まれていた。今残っているのは、55.78億円の紹介手数料だけだ。
強気に見える材料 - GPUは確かに動き始めている
国内第1号データセンターでは、台湾Compal Electronicsとの売買契約に基づき取得したNVIDIA製B300搭載GPUサーバーの搬入が実際に始まっている。内装・電気・空調の工事もほぼ完了していて、順次セットアップが進んでいる段階だ[1]。「提携しました」で止まっている話ではなく、物理的に機材が動いているという事実は、素直に評価していいと思う。
調達契約も規模だけ見れば派手だ。国内B300(GPU5,080基・約509億円)、タイB200(GPU4,696基・約411億円)、豪州B300(GPU10,000基・約814億円)。B300をこれだけまとめて確保できているなら、供給網としての希少性は本物かもしれない。8月末にはタイのGPUリソースを米大手AIインフラ事業者に最大5,000基・36カ月貸し出す方向で覚書も結んでいる。ただしこれはMOUで、価格も規模も開始時期も法的拘束力はまだない。
危険材料 - こっちのほうが正直、量も重さもある
まず新株予約権。第23回新株予約権は行使価額1,250円の固定型で、発行時点の潜在株式数は4,400万株、最大希薄化率は約199%という設計だった。8月12日時点の残存潜在株式は約3,020万株(要出典確認)。発行済株式数3,760万株に対して、今後さらに約80%の株式が出てくる余地がある。行使価額1,250円に対して株価は1,577円だから、割当先には行使する経済合理性がある。会社に約377.6億円の資金が入る一方で、同数の新株が市場に出てくる。財務にはプラス、需給にはかなりの劇薬だ。
資金繰りも軽視できない。1Q末の現金・預金はわずか7.62億円。これに対して公表済みの主要GPUサーバー取得契約だけで合計約1,734億円ある。前受金・借入・新株予約権の行使資金を組み合わせて回す設計だとしても、順番がひとつずれれば借入が膨らむし、顧客の正式契約が遅れればサーバー納入と稼働もそのまま遅れる。2026年3月期は営業利益35.44億円に対して営業キャッシュフローは49.13億円のマイナス。主因は売上債権の増加104.59億円で、期末現金はたった3.96億円しか残らず、新株予約権行使による131.47億円の調達で穴を埋めていた。1Q末の売掛金・契約資産も87.90億円ある。損益計上と現金回収は別物だということを、この会社の数字は何度も教えてくれる。
大口契約はナウナウジャパンという2022年設立・資本金1,000万円の会社を介した間接契約で、財務状態も最終顧客も守秘義務で非開示になっている。非開示そのものが不正を意味するわけではないけれど、業績の大部分を占める商流としては、率直に言って透明性が低い。
最後にもうひとつ。大株主のFirst Plus側は新株予約権を持ちながら、保有株を市場外で処分し続けている。8月25日には議決権ベースで11.91%から9.77%へ低下し、主要株主から外れた[5]。新株予約権を大量に保有する側が、普通株を淡々と処分していくという構図は、需給を見るうえで頭の片隅に置いておいたほうがいい。
結局、どこを見ていればいいのか
強気派が見るべきなのは、GPU数ではなく稼働日だ。国内B300の実稼働日、豪州・タイ案件の正式契約、料金と最低利用保証、顧客前受金の入金、そして営業キャッシュフローの黒字化。ここが揃ってくれば、株価1,577円という数字はかなり違って見えてくるはずだ。
弱気派が見るべきなのは、売上742億円の穴、残存約3,021万株のワラント、信用買い残約808万株、手元現金7.62億円、巨額設備契約と借入依存、そして大株主による株式処分。この5つ、いや6つは、決算が良く見えるたびに忘れられがちだけれど、消えてなくなったわけではない。
[2] データセクション「国内第1号のAIデータセンターにNVIDIA製B300搭載GPUサーバーの搬入を開始」2026年7月17日(PR TIMES) https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000084.000036921.html
[3] データセクション「訴訟提起に関するお知らせ」開示要旨(2026年7月31日提訴) https://finance.biggo.jp/news/jpx_tdnet_140120260803506704
[4] Wolfpack Research 空売りレポート(2025年10月8日公表)に関する報道 https://x.com/WolfpackReports/status/1975758389914337585
[5] FIRST PLUS FINANCIAL HOLDINGS PTE. LTD. 大量保有報告書データベース https://maonline.jp/db/companies/3905/shareholding
※信用取引残高・完全希薄化後PER等の一部数値は要出典確認。取引所発表の最新値を必ず個別にご確認ください。本稿は個別銘柄の売買を推奨するものではありません。
